【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第2章 「公安警察」×「整備士」
「ああ、元気にしてたさ」
大きく風が吹いた気がした。顔が見たい。悲しんでいる顔が見たいとかそんなことではなく、ただ単に今これを聞いて、宮下は何を思ったのか。でもやっぱり夜はそれを許してはくれいない。
「ひとりなのは、もしかしたら宮下だけじゃないかもしれないな。あいつらは、俺が唯一、〝降谷零〟でいられる奴らだった。もう俺を降谷と呼んでくれる奴は限りなく少ない」
俺は逆光で模られた宮下のシルエットを見つめながら言う。
今、俺は誰だ。バーボンか、それとも安室透か。暗くても、俺には見える。もう目の前に答えがある。
そうだ、警察学校で過去一の異才だと言われた俺の後を僅差でキープし、唯一超えることが出来ないと思った相手。俺だったら、俺だったら――。
「なぁ、 」
この時、初めて俺は宮下の名前を呼んだ。
「公安に入らないか?」
おそらくその目はまだ潤み、眉はまるで「急に何を言い出すのか」と言いたげな困り眉になっているに違いない。
「公安? いくら警察学校でいい成績でもあんなエリートのとこにノンキャリアの私が入れて下さいって言っても弾き返されるわよ」
ああ、そうだったな。彼女にはまだ言っていなかったな。そう思い俺はフッと笑う。そうだ。もうあれから五年も経ってるんだった。
「…言い方を間違えた。俺と一緒に仕事をしないか宮下。戻ってこい、こっちへ」
「まって、あんたもしかして…………公安なの?」
わずかな雲で隠れていた月明りが辺りを照らし始めた。わなわなと半開きの口から消入りそうな声でそう俺に問いかけてる。初めて聞く宮下情けない声に思わず俺は吹き出しそうになるが、きっと今ここで吹き出したらきっと宮下は公安には入ってくれないだろう。
「ああ、警察庁警備局警備企画化〝ゼロ〟」
目を見開くとすぐに彼女はふっと口元に笑みを浮かべる。