【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第2章 「公安警察」×「整備士」
「………そうね、でもね降谷くん。私はもう身内はいないの、だからこそ自暴自棄になれるんだよね。でも、この仕事してると私は死ぬわけにはいかないって分からされるの。海外にはいつも良心的に協力してくれる知人がいるし。私しかいないって頼ってくれている人もいる。私じゃないとだめだって。なんなら私に好意を抱いている人だって。………嬉しいよ、私は常に誰かに頼られてる。一人なわけないじゃない」
ふっと小さく笑うと宮下は建築物が一切ない空一面に広がる夜空を仰いぐ。
「ひとりじゃないよ。ひとりじゃない、はずなのに。そう言いたいんだけどさ」
どんどんと、彼女の声が、小さく、震えている。
「ひとり、なんだよね――」
ベランダのフェンスを握りしめ俯いて震える宮下。逆光で表情は見えないが見えず、どんな顔をしているのかさえ分からない。
強がってはにかんでいるのか、それとも悲しくて泣いてるのか。この世すらも俺に見せてはくれない。
「もし私が死んだとき、一体私のために何人が涙を流すか」
そうだ、俺にだって仲間がいる。頼られている。部下もいる。それなのにふとした時に、自分はひとりだと、松田達はもうこの世にすらいないんだと思いはせる時がある。同情してしまった、まるで自分の心の弱く脆いところをえぐり出されたような不思議な気分だった。
「もし、犯人さえ捕まえることが出来れば、私はどんな終わりだって構わない」
宮下が言うその言葉に俺はどこか虚無感すらも感じた。
「…宮下」
「何よ」
「覚えてるか、松田達のこと」
「当たり前じゃない。あぁ、そう言えばみんなは元気?」
鼻をすすってから宮下が言う。さっきの震えた声とは違い強気な声にベランダから俺を見下す姿はまるで警察学校の頃に戻ったようだった。