【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第2章 「公安警察」×「整備士」
「ゼロも乗りたくなっちゃった? 同じゼロだし」
「べ、別に…あんな派手な車、趣味じゃないよ」
「趣味なんだ〜」
「だったら、もしもの時に対応できる整備店をあらかじめ調べておいた方がいいよ。外車は特に買った時に日本国内に取り扱ってくれる場所が近くになかったらそれこそ大変なことになる」
「へぇ、宮下さん車に詳しいんだね」
「あ、いや………親が整備士だからある程度は」
「そうなんだ、初めて聞いたよ」
「まぁ、誰にも聞かれてないし…」
「宮下で整備士って、もしかして昔人力車だったとこ?」
「うん。良く知ってるね」
「高校の時教科書に載ってたから覚えてるよ。松田が知ったら質問攻めされそうだから気をつけてね」
ヒロのその言葉を聞き分かりやすく顔を顰めて拒絶する宮下をヒロは小さく笑った。
俺を置いて静かながらも弾む宮下とヒロの会話に俺は微かに苛立ちを覚えていた。
いつの間にか彼女に目に見えない壁を感じていた。
たとえ勝負に勝っても、成績が上でも、宮下にはなぜか勝てない気がした。ずっと疑問に思っていた。はたから見れば一目瞭然の愛想のない返事だが自然と続く会話も、そこから広がる話題も無理がない。
表上で彼女を超えることが出来ても、俺が彼女を超えることはない。そう思った。
そして卒業の日、六ヶ月の警察学校を終えた俺達と違って高卒で入って来た宮下達が卒業するのは四ヶ月先になる。その為卒業式には宮下も含めて数人がいなかった。
月日が流れて四ヶ月後、忘れた頃に宮下の話題を再び吹っ掛けてきたのはヒロだった。
「今日、やっと皆卒業するね」
「そういえばそうだな」
「ゼロは宮下さんの話聞いたか? 卒業したけど諸事情で警察官やめて実家帰ったらしいよ」
『はァ?!』と、思わず声を荒げそうになった。
首席にはならなかったものの、あんなに、あんなに俺の後ろに張り付いていたのに警察官にならないなんて。そんなことあるのか。
だったらなんのためにあいつは首席を目指してたんだ。何が目的でそんなに――。初めて宮下に直接問ただしたくなった。
それにあの成績を修めておいて警察官にならないなんて。あの逸材を逃すなんて馬鹿げてる。たとえどんな理由でも俺が教官だったり上司だったら強引にでも説得して引っ張り出すというのに。