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【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】

第2章 「公安警察」×「整備士」



しかしこの時、俺は気づいてしまった。足元のすぐ後ろに仕掛けようとする宮下の足があることを。
人間の視界は縦に広くない、そして無意識のうちに目に映った情報を処理する。左手に持ったナイフ、空いた片手、咥えられたナイフ、空いた両手、変化する状況に気を取られ無意識のうちに空いていく穴に気づけなかった。地に足を付いていたらまだしも、今全体重が支えられていない時に足技を仕掛けられたらバランスを崩した所で背負い投げで一本取られる。

俺は咄嗟に手を放し距離を取ると。まるで待っていたかのように仕掛けて来たのはゴムナイフの投擲に観戦してた同期達が騒めき出した。投げるなんてありなのかよ。
おぼついた足元で避けるとついには腕を両手で取られ足をかけられた。

まずい、負ける。
初めてそう思った。

両手で思いっきり引っ張られる感触にグッと目を閉じたその刹那、力まれていた腕が解放されその場にドタンと音が響き渡った。周りの皆が騒めき出し、気づいたころには地面に肘をつき手の平を付いているのは宮下の方だった。
一体何が起こったのか、それは宮下も同じ様子だった。手を差し出せば宮下は黙って手を取り目を白黒させながら俺を下から見上げた。しかし立ち上がり何かに気づいたかのように手の平を数秒見つめた彼女を見てすぐに分かった。
そう言えば、宮下は汗ひとつかいていない。

「もしかして、滑ったのか?」
「…」

汗だ。汗で滑って力と勢いに任せ自分が転けたんだ。
そういえばつい最近、宮下が松田と話していた。手汗だけなぜか汗をかかずよくスマホを落とすことがあると。
思い返せば実演に入ってから服で手を時々拭っていた。俺はそんなに汗かきだっか?、と疑問に思うが、この夏の猛暑でこの人口密度じゃ汗なんて体の構造上かかないほうがおかしいだろう。おそらく他にも理由は多々あるが勝ったはずなのになぜか嬉しくはなかった。
最後には観戦していた同期達は歓声を上げて実演は終わり授業が終了した。皆この事実を知らずに、結局実演の勝敗で勝ったのは俺だった。その後、実演で授業が押してしまい代弁をする暇もなく更衣室で着替え次の授業の準備を始めるが、教室で松田達がどんな技を使ったのか迫って来た時も彼女は見て見ぬふりだった。俺がもし逆の立場だったらまず松田を一発ぶん殴ると思う。
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