【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第2章 「公安警察」×「整備士」
××××
警察学校にいた頃、入学して数ヶ月後宮下は来なくなった。自己紹介で高校を卒業後すぐここへ来たと彼女は言っていた。第一印象は、真面目で大人しく奴だった。特別すごい成績というわけでも、悪い印象もない。ただただ普通の人間。
教官曰く『身内で不幸があった』と言っており休暇を取っていると言っていた。
その宮下が休暇を取っている時期に、お手洗いへ行こうと授業を抜け出し廊下を歩いていた時偶然すれ違ったことがある。まぁ、向こうは気づいていない様子だった。というよりかは、気に止める余裕がなかったと言った方が正しい。
一目見ただけでも分かるほど酷く落ち込んでいた。その落ち込み具合からしておそらく両親のどちらかを亡くしたんだろう。
すれ違うと同時に俺は宮下を横目で追った。
ああ、あれはもうダメなやつだ。
ありとあらゆること全てに負の感情しか湧かなくなっている。
夢と期待に胸を膨らませ入学して数か月後にあんな知らせを受ければ、誰でもショックを受けるだろう。
しかし、宮下と廊下ですれ違った次の日、彼女は何事もなく復帰していた。
廊下ですれ違った時とはまるで別人のようにオーラも表情も、何もかも入学当初と変わらない宮下だった。復帰した宮下に皆がそれぞれに声をかけ励まし、休んでいた分のノートや授業の内容を教える姿を見ていると改めて皆警察官へなるに相応しい人間だと実感した。
ただ、あまりにも宮下が周りに相談したり、顔にも出さないものだから、もしかするとこころの隅に消えることも小さくなることもない、行き場の無い感情を強引に押し殺しているのではないかと、そう思ってしまった。
学校で孤立している訳でもない。友達もいるし教官とも仲がいい。一見おとなしそうな見た目でも、社交性は高くコミュニケーション能力はある。集団行動の時もマイナスの言葉は絶対口にせず、常に周りを心配して声をかけるような人だ。
確かに宮下は弱い人間ではない、だからこそ心配になった。
誰にも言えずに、心配をかけてはいけないと、気を遣わせてはいけないと、ひとり孤独でいるのではないかと。
「なにかあれば相談してくれ、抱え込むのは一番身体に悪いからな」
「…ありがとう降谷くん」
そう声をかければ、宮下はいつものように俺に笑いかけた。そう、いつものように。