【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
「安室…ああ、知ってたんですね。彼が公安だってこと」
容姿は沖矢昴さん、声は赤井さんと言ったなんともややこしいスタイルなので理解に時間がかかったが、まさか公安の中でも諜報員である降谷くんの正体を知っている…かもしれないとは薄々思っていたがそのまさかだった。
「まぁ、昔いろいろとな」
「またそれですか…ホントに…多分聞くと絶対長いと思うので聞かないですけど……まあ私と彼は普通ですよ」
「普通……とは?」
「……? 普通は…普通ですよ」
「では率直に聞こう。恋愛感情を彼に抱いたことは?」
抱えていたあまりの資料が思わずクシャリと音を立てた。
これは動揺の反応でも図星の反応でもない。これは赤井さんからの思いもよらない質問に「?」を浮かべての反応だ。それに無意識に「はい?」と言葉が口からこぼれだしている。
「質問を変えてみよう。もし、彼が自身に拳銃を向け代わりに犠牲になるような行為を取った場合、君はどうする」
「え、急に?」
私の反応など気にも留めぬまま赤井さんは自身に人差し指と中指を突き出しながらそう言うとチラッと横目で私と視線を交わした。数秒して私はその赤井さんの腕を掴んだ。
「止めるに決まってるでしょ」
「それは、誰として止める。誰の為に止める」
「誰って、彼には皆が…公安の仲間もいるし………」
「仕事のために、彼の犠牲を止める?」
その率直な言葉に私は唇を噛んだ。
間違ってはない。そう、間違ってはないんだ。ただ何かが足りない。けれどそれをどう言葉にしていいか分からなかった。
「たとえば、俺とジョディは元々恋人同士だったが…」
「え⁉」
唐突、自分語りを始める赤井さんの初めて聞く事実に思わず声が裏返ると同時に掴んでいた腕をなぜか反射的に離した。
それに一瞬きを取られ一度横目で赤井さんは私と視線を交わすがすぐに正面へと視線は戻り、もう片方の腕も何事もなかったかのようにセンターコンソールに腕を落とした。
「………続けよう。もし俺だったら、同僚としてではなく、同じ仲間としてではなく。一人の元恋人として止める。まあいずれ分かるさ、大事なものと大切なものの違いが」
その言葉を最後に、私は赤井さんから視線を外した。