【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
手前に止まっていたトラックの死角で、子供が見えていないのか軽トラックがスピードを緩めずに走ってくる。
このままいけば、子どもが轢かれる。そう推測するのに時間は掛からなかった。
気づけば私は少年を追っていた。もしかしたら隙を突かれてアンダーに撃たれるかもしれない。なぜかそんな心配が出ることはなかった。
今車が通っているギリギリの境界線に差し掛かったところで私は手を伸ばした。
−−届かない。
そう分かった途端私は助走をつけた。
“警察の追跡で二次被害、幼い子どもが車に轢かれて重症”なんてニュース出されたらたまったもんじゃない。小さいから、まだ助けられることだってある。整備士の時は怪我なんて日常、拳銃で撃たれた痛みも経験済み。
治る傷なら、いくらだって私が受けてやる。
覚悟の上だった。しかし少年を抱え込んだ途端、急ブレーキ音と共にふわりと体が重力に逆らって浮いた。正直車がぶつかって来る衝撃とは正反対で一瞬何が起こったかわからなかった。
しかし背中から伝わって来る体温と、私を覆えるくらいの背丈ですぐに私を横抱きににしているのがアンダーだと分かった。
ゆっくりと少年を抱えていた私を下す。
「もう関わらないでくれ、頼む」
いつにも増して、か細い声な気がした。
そう言い残すと、少年を轢きそうになっていた軽トラックから人が降りて来た瞬間、アンダーはその軽トラックを奪って逃走した。
「宮下さん!退いて!」
風見さんが銃を構え数発銃弾を放った。しかし車のボディーに埋め込まれアンダーには当たらず、そのまま荒らすだけ荒らしてアンダーは逃走した。
私はそれからただ、抱えられた少年と同じように唖然と、そして呆然と立ってることしか出来なかった。
やっぱり、何か変じゃない?
私の中の誰かが問いかける。自分の心の隅にある違和感が膨れ上がる。人を殺したくせに、人を助けるなんて、そんなことってあるの?
「宮下さん」
そう呼ばれて振り返れば抱えていた少年を風見さんが抱き寄せ、代わりに私にハンカチを差し出した。
まだ整理の追いつかない頭で、ひとまず左足出されたハンカチを受け取ろうと身左手を差し出すと手の甲が擦り剥けて血が出ているのに気がついた。