【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
冷やされたトマトが口に染み、それをふんわりと優しい味のスクランブルエッグが癒した。相変わらずハムサンドも意味の分からないくらい美味しい。ねちゃねちゃもしていないし、ほんのり温かくてふわふわしている。
添加物でも大量に使っているのだろうか。
「ボタン」
そんなことを思いながら呑気に朝食を取っていれば降谷くんに突然そう言われるがまま視線を落とした。
寝ている間に空いた第三ボタンに今更気づけば黒のレースの付いたキャミソールが微かに隙間から覗いている。
最後の一口にしては少し大きな残りのハムサンドを口に押し込むと頬を膨らませながら大人しくボタンを止めた。
「ッ…⁉」
しかし突然の出来事に思わず私は面を食らう。
口に押し込んでいたハムサンドが思わずこぼれそうになるのをグッと堪えて降谷くんに視線を戻す。
当然降谷くんから腕を引かれたことによって重心が傾き咄嗟にもう片方の腕を反対に着いたとはいえ、隣に座っていた降谷くんにほぼ重心を預け居ている状態でしかも本人はそんなこと気にもせず私の服をなぜが嗅いでいる。
「いやいやいや、今度は何⁉」
突然謎の行動に出る上司に白い目を向けながら腕を引くが、引けば引くほど重心が傾いてその体重に柱の役目になっている右腕がプルプルと震え出す。
「お前、昨日ちゃんと休んだのか?」
降谷くんは真剣な顔で私のチェックのワイシャツの袖を嗅ぎながらそう言った。
それと、休んだことに一体なんの意味があるんだ。
私はぶっきらぼうに「休んだってば。何なら夜私が21時に寝室で寝に行ったのを見たでしょ⁉」と強めに言う。
「いつから煙草なんて吸ってる」
「……煙草?」
それを聞いて、私はああっと思い当たる節があることに気づく。
昨日濡れた服を赤井さんの服と一緒にちゃんと洗ったし、乾燥機もかけたはずなのによく分かるなと思いながら私は降谷くんが赤井さんを酷く軽蔑している様子から咄嗟に名前を出すのは避けようと咄嗟に口実を口走る。
「………しないよ、多分匂いが移っただけ」
「煙草の匂いが移る場所で休めるとこなんてあるか!」
「違うよ! 来客が来ててその人が吸ってたの! それだけ!」
「やっぱり休んでないじゃないか!」
いい年してぎゃあぎゃあと水かけ論が始まったせいで、いつのまにか降谷くんのコーヒーカップから上がっていた湯気は消えていた。