【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
翌日のまた早朝。休暇を有効活用し早めに寝ていたせいもあってか今まで以上にスッキリとした目覚めだった。2階から1階へ螺旋階段を降りれば、いつもはひんやりと冷たい空気のするリビングからは暖炉の仄かな暖かさと共にコーヒーの香ばしい香りが漂っている。
誰もいないはずのソファーに何事もなく座りコーヒーカップを片手にニュースを見ている降谷くんがいる。
風見さんと違い諜報員とあってかあまり警視庁には顔を出すことも少ないため、あの会議依頼直接顔を合わせたのは昨日のこと。たまたま近くで降谷くんが担当している捜査があると風見さんから聞いた私は「移動時間の分、睡眠に使った方がいいよ」と自宅に招いた結果、すんなりと彼が来た。
ただ誰か一人でも家にいると、寂しさが紛れて心地が良くなるのも確かだった。
今となっては自分の為言ったことか、彼のために言ったことかも危うい。
「ご飯食べた?」
「カウンターに置いてあるぞ」
テレビに視線を向けながら降谷くんが言った。
カウンターテーブルに視線を向ければ、ランチマットの上にはプレートに盛られたあの時ポアロで食べたであろうハムサンドとスクランブルエッグ、ウィンナーにカットトマトが添えてある。
意味が分からないほど引いたと同時に、女の癖して自分の出来損ない料理の腕前に絶望した。
彼は本当に今日寝ていただろうか。
「……本当に食べていいの?」
「お前以外に誰が食べるんだ」
降谷くんはそう言ってまたコーヒーに口をつけた。
というか何事もなくコーヒーも料理も作ってるけど、いつ私そんなの教えたっけ。むしろ彼がいることに違和感すら感じない。
私はなんとなく降谷くんの作ってくれた朝食プレートとそばに置かれた小分けの牛乳パックを持ってテレビ前へのローテーブルへと移動し、プレートを目の前に置くとソファーへ腰掛けながら牛乳パックに付属していたストローを取り出して差し込んだ。
「もうクリスマスか」
クリスマス帽を被ったニュースキャスターと大きなクリスマスツリーが画面に映る。私達とは到底無縁な行事であり、時に厄介な行事でもある。
「捜査が混乱しそうですね」
寝起きのせいか、自分で言ったくせに他人事のように聞こえる。空っぽの脳みそに流れてくるニュースを右から左へと耳にしながらプレートに手をつけた。