【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第1章 「整備士」×「RX-7」
「いつもの口座か」
「…………ええ」
「…わかった。出来たらすぐ電話してくれ」
そう端的に告げると降谷くんはキャリアカーへと戻ると何やら運転席にいる男と話している。
窓から見えるのはモスグリーンのスーツを着た眼鏡で短髪の男性。格好から見るに業者の人ではない。その彼が今度は降谷くんとすれ違うように運転席から降り、降谷くんは助手席へと戻っていた。
下りて来た眼鏡の彼の手にあるのはRX-7のキーとそのスマートキー。それに気づいた私は彼に駆け寄るとそれに気づいた彼も歩みを止めた。
「移動はいいよ、私がやっておくのでキーだけ下さい。一応、動くんですよね?」
「え? えぇ、すごいですね、見ただけでわかるなんて」
「まあ、五年もやってますからね。お疲れ様、彼が上司じゃ大変ですよね」
それを聞いた彼は少し戸惑った表情を見せ目を泳がせたが、すぐにフッと笑みを漏らし優し気な笑みを浮かべた。
「ええ、とても大変です。大変ですけど、彼のストイックさは、尊敬しています」
その言葉に私は思わず目を丸くした。悪い意味ではなく、いい意味で予想外だった。ふぅんと喉を鳴らすと私は眼鏡の彼から車のキーを受け取った。
「でも、あんまり調子に乗らせないようにね。なんかやらかしたら怒っていいから。あとこれ、動かしたらすぐ帰っていいよ、レンタル料金もあるでしょうし」
「ええ、ではお言葉に甘えて」
私はそう伝えるとすぐにトラクター後ろのシャーシへよじ登りボロボロで丸ごとドアの外れたRX-7運転席へ乗り込みキーを差し込んで回す。
流石に一回ではエンジンはかからず四、五回同じように繰り返せばガコンガシャンとものすごい音と振動と共にエンジンがかかる。申し訳ないが思わず吹き出しそうになってしまった。
動かせるということはガソリンタンクやハンドルに繋がる部品はある程度無事なんだろう。むしろ奇跡なくらいだ。
なんなら致命的になる傷だけ避けてある。随分器用なことだ。これはガソリン漏れで爆発でもしないと永遠にこのループを繰り返すに違いない。もういっそのこと爆発してもいいんだぞRX-7。