【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第1章 「整備士」×「RX-7」
「あれ、うちの執事から聞いていないんですか? 実は私、来月から仕事でパリへ出張するんです。寂しいですが貴方に会えるのはまた来年です」
それを聞いて私は『なるほど』と納得する。だから今月はこんなに豪華なお土産ばかりなんだと。
「そうだったんですね、くれぐれも体にはお気をつけてください」
「ありがとう。ではまた」
そう言って勝典さんは車へと乗り込んだ。遠退いていく黒のリムジンに私は見えなくなるまで手を振り続けるとほっと肩を撫でおろした。
次は彼の番だ。未だ退くことなく隣で大人しく待っている降谷くんに私は顔を向けるが、今はお客さんはいない。
さっきまでの態度や営業スマイルとは程遠い、眉間に皺を寄せて彼を睨みつけるがやっぱり彼はいつも通り変わったよ様子は見られない。
「降谷くん」
「はい」
「なぜ私が元警察官なんてバラしたの、それに戻る予定なんてないのにどうしてそんな嘘を」
「そうでもしないと引き下がらなかっただろ」
「さっきみたいに考えておきますって先延ばしすればいいの」
そう言って私は降谷くんに手を差し出す。
頭に?を浮かべ私の手の平を見つめる降谷くんに私は一言「スマホ」と言うと胸元のポケットから降谷くんはスマホを取り出しロックを解除した。
手渡された生温かな降谷くん体温を移したスマホを手に取ると私は電卓機能に手馴れた手つきで数字を打ち込み始める。
「………部品、塗装、ワックス、オイル、輸入料、その他諸々、プラススピード料金300万。880万前払いよ」
自分で言っておいてあれだけど、それでも嫌気が差す値段だ。本当はありえない、スピード料金300万なんて。
この前のスピード料金は30万円程度だったからさすがの降谷くんも異変に気付くだろう。いいや、気づかないはずがない。
それとも、そこまでしてでも譲れない何かがある?
一般人のもう警察官ではない私に言えない何かが。
それに、たとえそうだとしてもそうでなかったとしても、こうでもしないとこの男は引き下がらない。
彼がなぜそこまでしてこの車に執着するかは分からないが、いままで掛かった修理費を考えたらもういっそ同じ車種の新品のRX‐7を買った方が安いはずなのに。