【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
私がいつも使うのは一般家庭で、市販で売られているような白いセラミック包丁。家の料理包丁は五年前から使っていない。使った記憶があるとすれば、料理人であるアンバーが来たあの日しかいない。
私のただの早とちりかもしれないと、心のどこかでありえない。とバクバクと早まる鼓動にそう言い聞かせながらオーブン横にある料理包丁専用の戸棚をガッ、と開けた。
「勝手な真似はしないで!」
三本あるはずの料理包丁のうち、一本分空白の開いた戸棚を目の前に手首を後ろで拘束され手首には冷たい手錠がはめられた。
××××
数十分後、警視庁刑事部エリア。 後ろで手首を手錠で拘束されたまま取調室がある先の廊下を歩かされていた。
「この手錠、いつ外してくれる気」
「生憎、鍵は僕持ってないので…」
「誰かさんがキツく閉めたせいでさっきから擦れて痛いの。あの佐藤さんって言う人が来たら言っといて」
私の腕を持ちながら隣で歩く高木と名乗った刑事さんにそう言えば私は呆れて私は顔を逸らす。
自分でも立場をわきまえていない言葉使いは十分承知している。でもこうでもしないと気持ちがどうにかなってしまいそうで、時々落ち着かせるために深呼吸を繰り返していた。
「私、調査中の仕事があって朝から張り込みだったんですけど、なんかあったら刑事部が責任取ってくれるんですか?」
「えっと、国際指名手配のやつですか?」
「まだ、アメリカの大使館が情報伝達に遅れて公開手配はできてはないですけど、都内の小学校はここ最近ずっと集団下校で警戒モードですよ」
「同じ部の人に代わってもらうとか…」
「その前にあなた達が私に手錠を掛けたんでしょうが‼」
「宮下さんが逃げるような行動を取ったからからですよ!」
「確かに、私の管理ミスで人ひとり傷つけてしまった自覚はある。仮にも私は公安、そんな腐った精神なんてしてたら今頃上司から怒鳴られてクビにされてる」
「…管理? もしかして誰かを家に上がらせた時に奪われたんですか?」
「それも全部取り調べで話すんでしょ」
取り調べ室に着いた頃にそう吐き捨てる。
中にはすでに、二人の刑事部の人達が配置についていた。まさか私がこの椅子に座る日が来るなんて。屈辱だ。二人の目はまるで全員が私を犯人だと見て疑わない。