【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
翌日の早朝、アメリカ大使館前駐車場―車内。
用を終えた降谷くんがいつもと変わらぬ足取りで帰って来るのが見え背を伸ばした。彼の愛車であるRX-7の運転席に乗り込んできたと同時に私は声をかけた。
「ついに来ました?」
「いや、どうやらサイバー攻撃に遭って転送が送れているそうだ」
「なるほど、それは厄介ですね」
「まあどっちにせよ、彼に取り巻きがいることは確実だ」
降谷くんは一枚の資料を私に手渡す。
名前:レイス・ヴィリアント
国籍:アメリカ合衆国
身長:186cm
テキスト入力でそれ以外は何も書かれておらず空白となっている。
「一番重要あのは顔写真なんですけどねぇ…」
見終わったたった一枚の資料をペラペラと泳がせながら降谷くんへ返した。
「転送され次第公開手配するそうだ」
「いい加減FBIと協力したらどうですか? せめて情報だけでも一刻も早く別ルートで入手するべきでは?」
「個人と国では、情報の信用度が違いすぎる」
「その情報を貰う相手がFBIだとしても?」
「たとえどんな人でも、俺達は疑わなければいけない。たとえ仲間でも、大切な人でも」
降谷くんのその言葉に、私は昨日哀ちゃんに言われたことを思い出した。
〝「そんな証拠どこにもないわ!」〟
変な感じだ。まるで自分の中の核心を突かれて失いたくないあまりに私はそれを避けているみたいだ。
その可能性でさえ、私は怖いんだ。また失う可能性がさらに私の自尊心を煽り立ててしまう。
でもなんと言われようと、これだけは違う。アンダーは、絶対に違う。
たとえ、その可能性があったとしても―――。
「次やることは分かってるな?」
「わかってますよ上ので張り込ん出ればいいんでしょ」
私はそう言いながらシートベルトを締めた。
ふと、もし私が事件に関与していたとしたら、降谷くんも私を疑うんだろうか。
そんなことを思いながらアンダーと連絡先を交換しそびれた失態と、未だ心のどこかに残る違和感に身を浸らせた。それがのちに、間違いではなかったことに気づくにはそう時間はかからなかった。