【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
「…? どういうことだ? 君は今なにも持ってはいないじゃないか」
「アンダー、今何世紀だと思ってるの? それに私はお父さんの娘だよ。原型なんて自由自在に操れる。それに、あんな分厚い紙束危なっかしくて燃やしちゃったよ」
そう言って私はコップに口を付けた。再びアンダーの口が開き言葉を発すると同時に、その言葉はガチャンッ、とコップが倒れる音にかき消された。
音のした方へ目線を向けると、哀ちゃんの座っていたカウンターテーブルの上に倒れたまだ中身が入っていたであろうコップが倒れジュースがこぼれてしまっている。
「大丈夫ですか灰原さん!」
「珍しい、哀くんがコップを倒すなんて」
「哀ちゃん怪我はない?」
慌てて駆け寄ってそう問いかければ、哀ちゃんは頷いた。幸いジュースが飲みかけだったおかげで服にかかるほど飲み物が垂れると言ったことはなく、近くにあった台拭きで広がらないようにふき取ってあげる。
「…ごめんなさい」
「私はいいの、気にしないで。 すぐに新しいの持ってくるから哀ちゃんは気にせず食べてね」
そう言って使い終わった台拭きとコップを持ってキッチンへ向かう離れ際に哀ちゃんへ小さく耳打ちをする。
「大丈夫、私を信じて」
哀ちゃんは少し間を開けてから再び頷いた。
そして約二時間ほど家で皆と食事を楽しんだ後、コナンくん達は阿笠さんの車、ビートルに乗って帰って行った。皆が帰った後にアンダーと後片づけを終え日付が変わる前に彼もタクシーでこの家を去った。
その間に、常に気にしていたタブレットの情報からはこれと言った有力な情報はまだ出ていない。
テレビ前のソファーに背を預けながらタブレットをスクロールする。
日付が回り、皆がいなくなった薄暗いリビング、暖炉の焚火と付けっぱなしだったテレビのニュース番組が響いた。