【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
〝歴史を変えた! 人類を救った科学物質とその研究論文〟
そうタイトルに書かれた古く分厚い本を熱心に小学一年生の女の子が読んでいる。
そんなことを思っているとさっきからページが全く進んでいないことに気づき哀ちゃんへ視線を向けるとバッチリと目が合い。「あッ…」と思わず声が漏れる。
「ずっと見られてちゃ見にくいんだけど」
「ごめんごめん…二人とも難しそうな本読むものだからつい……。それに私大人になってから全然本とか読んでないから面白いのかな~って」
「別に、私はどっかの推理馬鹿と違って面白くて読んでいるわけじゃないわ」
哀ちゃんはそう冷たく言い放つとパタンッ、と読みかけだった本を閉じてしまう。
「ねぇ、あなたあの彼のことどう思う?」
唐突にそう聞かれた。
それがそう言う意味なのか、私には分からなかった。
「それは………どういう、意味?」
「あなた、この前博士の家に来た時に言ってたわよね。狙われてるんでしょ? もっと自覚を持った方がいいわ」
急に何を言い出すかと思えばそんなことだった。
「もしかしてアンダーソンのことを疑っているの? やめてよ、アンダーはいい人だよ」
ヘラっとしながら言った自覚はあった。その言葉にわかりやすく哀ちゃんは歯を食いしばると声を荒らげた。
「そんな証拠どこにもないわ! あなた感じなかったの⁉ あの人…っ! ……檸檬は普通の家庭用のナイフで切って、そのまま同じものを使えばいいものをわざわざケーキを切るために場所の分からない家庭用よりも鋭くて刃渡りの長い料理包丁をあなたに聞いてまで? わざわざ? 普通に考えたらおかしいわ! 私だって、最初は別になんとも思わなかったわ、それに最初の時だって何も感じなかった。けど彼がキッチンで仕込んでいる時、あの料理包丁を持った時……瞳孔が開いていた。あれは人ひとり殺したことのある人間の目だった‼」
「お、おい灰原…‼ お前落ち着けよ!」
哀ちゃんはまるで何かに取り憑かれたように喋り出す。
私はただそれを呆然と聞いているだけしか出来ず、彼女の言っていることに共感はできなかった。ただここまで必死に言ってくれているということは哀ちゃんが私のことをひそかにすごく心配してくれていることが分かりなんだか嬉しくなった。
「……………め」
「…………………め?」
私が放ったその言葉に哀ちゃんは眉を顰めた。