【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第5章 「元整備士」×「ポルシェ356A」
「そう言えばお腹は大丈夫か? もし食べたくないのであれば、病院に連絡を入れて看護師を呼んで栄養剤を打ってもらうことも可能だか?」
「いえ、食べます。栄養剤よりもちゃんと食べた方が治りも気持ち的にも丈夫になる気がするので」
「それは良かった、ちょうど昨日シチューを作ったんだ」
「赤井さん、料理できるんですか?」
「ここに来てから少しな。それと、ずっとこのままでは少し落ちつかないので過ごし着替えてくるよ。まあ、自由にしてくれ。すぐ戻るよ」
そう言って、赤井さんもリビングからいなくなってしまう。
私がこんなことしている間に、ほかの皆は何しているんだろう。
暇さえあれば自分のことより仕事のことを心配してしまう私はもう降谷くんと同じ仕事人間になってしまった気分だ。降谷くんはきっとどんな怪我でも
自分の責任のなさに不意に押しつぶされる。今度会ったらなんて言おう。なんて言い訳をしたらいいんだろう。
後から分かった話だが、歌舞伎町で起こっていた事件の数々はやはりあの殺人鬼達だったことが捜査で分かったと赤井さんが言っていた。
犯人目の前にして、実は犯人は私の持っている設計図も狙っていて、変装に気づかず薬を盛られて挙句の果てには逃げたくせして捕まって重症なんて自分の口から言えるだろうか。
情けない。守る立場は私なのに、なぜか守られてばかり。
考えれば考えるほど止まらぬ思考と鬱感に、私は顔を手で覆った。
ピンポーン――ッ
突然鳴るインターホンにむくりと顔を上げ、リビングの出入り口へ視線を向けた。
家の人は、――――――今、誰もいない。
ひざ掛けを退かして立ち上がるとゆっくりとした足取りで玄関へと向かい、玄関先にあったサンダルへ履き替え、ガチャリとカギを解除する。
「待って! お姉さん!」
ドアノブのグッと力を入れた瞬間、そう呼ばれ振り返る。
ドアを開けたはずのないどドアが引かれるのが分かる。
風の通る音が聞こえた。