第12章 指輪とそして
「でもよ、どうやってあの兄ちゃん探すんだ?」
「うん。なんかお客さんも増えてきたよ?」
元太くんと歩美ちゃんの言う通り、先程よりも若干客数が増えているように見える。
確かこのトロピカルマリンランドでは夜に花火を上げるそうだから、それ目当てで来たお客さんもいるのかもしれない。
「今の時間は午後5時半。トロピカルマリンランドは8時閉園だから残りは後2時間半しかねぇ。並ぶようなアトラクションは避けるはずだ」
「そうなると、1人でも暇を潰せる場所。恐らくあのレトロゲームパークに現れる可能性が高いわね」
そう言って、少年とさんがレトロゲームパークへと向かった。
俺達も慌てて後を追いかける。
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「あ!いたぜ!!あの兄ちゃんだ!」
元太君がそう叫ぶ。
そこには高木さんのと似たバッグを持った男性がおり、丁度ピッチングゲームで遊んでいた。
「よし、急いで取り押さえましょう」
「待って!」
高木さんが出ようとしたその時、佐藤さんが高木さんを制止した。
「あのまま取引まで泳がせて、ディーラーと接触したところで抑えるの」
「で、でも僕のバッグが…!」
「悪いけど高木くん、佐藤の言う方が得策だわ。
今は我慢してちょうだい」
わ、分かりました…としょんぼりする高木さん。
確かさんがプレゼントとか言ってたっけ?そりゃ早く取り返したいわな。
どんまいです高木さん。
そこから30分程が経過した時、男性がレトロゲームパークを出ていったので俺達も後を追った。
閉園まで残り2時間弱。
まもなく花火が上がる時間だ。
男性が向かったのはマリンランドの中央にある広場。
これからの花火を楽しみに、大勢の人で賑わっている場所である。
「まさかこんな賑やかな場所でやるんすか!?」
「賑やかだからいいのよ。誰も他人なんか見ていないから」
しばらくすると、男性の隣に見覚えのある顔が座った。
「あ、あれは、麻薬ディーラーの矢倉麻吉!?」
高木さんが思わず口に出す。
やっぱり、佐藤さんの読みは当たっていたようだ。
『皆さんお待たせ致しました!300発の花火ショー!夜空の大イベントの始まりです!』