第12章 指輪とそして
「しかもバッグがすり変わったことに気付いていないってことは、まだ取引の前だってことだ。恐らくこの後、このマリンランドのどこかで受け渡すつもりなんだろう…って、小五郎のおじさんなら言うかなぁって…あはは」
「流石コナンくんね!鋭いわ!」
パチパチと手を叩くさん。
さては、この少年のこと相当気に入ってるな。
「そしてその中身がもしヘロインなら、取引相手は指名手配中の矢倉麻吉かもしれませんね」
矢倉麻吉
その界隈では有名なヘロインのディーラーである。
しかも現在この近辺に潜伏しているという情報があるため、佐藤さんの言う通り取引相手は奴である可能性が非常に高い。
「とにかく、どうやってその運び屋を突き止めるかが問題ね。唯一の手がかりはそのバッグだけ」
「えっと、中身は、麻薬の入っている紙袋の他には、真新しいスポーツタオルとシミの着いたハンカチだけです」
それだけでは持ち主を突き止めるのは難しいな。
せめてもう少し情報があればいいんだけど。
「諦めた方がいいんじゃねぇのか?持ってかれたバッグだってどうせ大したもの入ってねぇんだろ?」
「え、は、入ってたんだよ!」
『佐藤に渡すプレゼントとか?』
さんが佐藤さんに聞こえない程度の声で高木さんに耳打ちした。
「え、あ、いや!」という反応の高木さんに、くくくっと笑うさん。
「あれれ〜そのバッグの肩ベルト、左肩側だけ穴が大きく広がってない?」
メガネの少年が何か気づいたかのように言い放った。
「言われてみれば確かに。
ということは、このバッグは普段左肩に背負われていて、持ち主は左利きである可能性が高いわね!」
「うん!それに、大きなスポーツタオルが入っていたなら、汗をかく仕事とか何かスポーツをやる人かもしれないね!」
左利きで汗をかく仕事かスポーツをやっている人、
それをこの広い園内から探し当てなければならないのか。
「やっぱり手がかりが少ないっすよね。せめて写真かなんかがあれば…」