第11章 揺れる
『松田くんが殉職した』
その瞬間、何も聞こえなくなった。
つけっぱなしのテレビの音も、道路を走る車の音も、秒針を刻む時計の音も、何もかもが私の世界から消え去った。
気付かないふりをしていた事実が言葉になって刺さってきた。
その一突きで、私は私の全てが奪われた気がした。
「分かりました、連絡ありがとうございます」
多分目暮警部は何か話の途中だったと思う。
でも、何を言っているか聞くことが出来なかったから、無理矢理電話を切った。
途端に足に力が入らなくなり、そのまま崩れ落ちる。
……また、失った。
私のせいで失った。
私が捜査一課に松田を異動させたから。
私が松田の手伝いをしたいと思ったから。
私が私の復讐をなそうとしたから。
私が、松田を殺したんだ。
「…あ゛あ゛っ、う゛っ、うう、、あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁ」
涙がとめどなく溢れてきた。
床に拳を強く叩きつけて、叫び声を上げながら私はひたすらに泣き続けた____