第11章 揺れる
しばらく考えていると、由美が携帯を持って病室から出てきた。
「あら電話?」
「はい高木くんから。
多分白鳥君のことだと思います」
そう言って由美は電話に出た。
「ああ、高木くん?安心して、手術は無事成功したわ。
今は意識が回復するのを待っているところよ。
ええ、うん。そう。
いーい、高木くん!
美和子を危ない目に合わせちゃダメよ!今回の爆弾犯が3年前に松田君を爆死させた被疑者なら、アイツ無茶しかねないし…
美和子を救えるのは高木くんしかいないんだから!」
そう隣で話す由美。
白鳥君が無事だった今、やはり頭に過ぎるのは佐藤のこと。
きっと今も寝る間も惜しんで捜査しているんだろうな。
「…由美、ちょっと代わって」
「え、あ、はい」
「もしもし高木くん?」
『さん?!』
「私からも、佐藤を頼んだわよ。あの子、突っ走ると周りが見えなくなるから」
『は、はい…!!』
「…ごめんなさい。本当は私のせいなのに……」
『さんのせいだなんて言わないでください。
伊達さんにもそう言われたんでしょう?』
___あいつがお前のせいだなんて言うと思うか?
それは、あいつに対して失礼なことなんじゃないか?
死んだ奴らをどう生かすかは、生きてる俺ら次第なんだ。
いつまでも湿気た顔してっと、あいつらにぶん殴られちまうぜ___
伊達の声が聞こえた気がした。
「うん、そうだね。ありがとう」
そう言って、由美に携帯を返した。
「私、飲み物買ってきますね!さんも何か飲みます?」
「あー、じゃあ缶コーヒーをお願い」
「了解しましたー!」
ニコニコで敬礼をする由美。
先程からすっかり元気になったようで良かった。