第11章 揺れる
その後、白鳥君は病室に運ばれた。
目を覚ましたらナースコールを押して欲しいとの事。
「私、目暮警部に連絡してくるね」
白鳥君を由美に任せ、病室を出る。
『そうか…無事でよかった』
「はい。それで、そちらの状況は?」
『未だ爆弾の在処は掴めていない。佐藤君らの話で、南杯戸駅から東京へ向かう東都線の車内を調べたんだが、中身は偽物だったよ』
「そうですか…
何かあったらまた連絡します」
目暮警部との電話を切って、送られてきていたFAXを眺める。
『俺は剛球豪打の
メジャーリーガー
さあ延長戦の始まりだ
試合開始の合図は明日正午
終了は午後3時
出来のいいストッパーを
用意しても無駄だ
最後は俺が逆転する
試合を中止したくば俺の元へ来い
血塗られたマウンドに
貴様ら警察が登るのを
鋼のバッターボックスで待っている』
これが、警視庁に送られてきた内容だ。
かつて爆弾が仕掛けられたのは杯戸町の大観覧車と米花中央病院、それらが面している道の延長線上にある南杯戸駅が怪しいと思っていた。
ストッパーは踏み切り、鋼のバッターボックスは電車の事だと睨んでいたのだが、仕掛けられていたのが偽物だったとは。
犯人は、捜査員がそこに探しに来ることを読んでいたのか。
やはり、3年前と同様ずる賢い奴だ。
そうなると、文章から読み取れる野球場には何も仕掛けられていないかもしれない。
これで東京に住む一千二百万人の人間を人質に取ったつもりか…
「警察をおちょくりやがって…クソッタレが……!!」
病院であることも憚らず、私は壁に拳を殴りつけた。