第10章 私のせい
今年、警視庁組織犯罪対策部が数十年ぶりに再編されることになった。
第一課から第五課までの名称をそれぞれ、国際犯罪対策課、暴力団対策課、薬物銃器対策課に名称を改め、新しく犯罪収益対策課が設けられたのだ。
再編をする上でネックとなるのが、人員不足。
特に女性の割合が極端に少ない部署であったため、即戦力となる女性警察官が必要とされていた。
「そこで、私に声が掛かったってわけ。
即戦力なんて言ったら私以外に適任居ないでしょ?」
「…否定はしねぇけどよ。
それで?どの課なんだよ。まさか、マル暴とか言わないよな…?」
「違う。国際犯罪対策課」
「…は?国際って、お前、」
「ええ。
英語どころか、多国語話せなきゃやっていけない課ね」
「大丈夫なのかよ」
「正直迷ってたんだけどね、でも、萩が言ってくれたからさ、
“俺らはちゃんと見てるよ”って。
だから頑張ってみようかなって。
ほら、私容量いいしさ」
あの時の萩の言葉は、私の中につっかえていたものを取り除いてくれた。
あの言葉のお陰で、私は今も頑張れているのだ。
「だから、私が抜ける分穴が空くのよ。
といっても、松田が希望する特殊犯係じゃなくて強行犯三係なっちゃうんだけど。
それでも良ければ、私がどうにかしてあげる」
「はっ、望むところだ」
そうしてわたしたちは、拳を合わせた。
「さーん!!」
遠くから佐藤の呼ぶ声が聞こえた。
「やばっ、戻んないと…!
じゃ、また連絡するわ!!」
急いでその場を去ろうとした時「!」と松田に呼び止められた。
「ありがとな」
松田はそう言って、ポケットに手を突っ込みながら微笑んでいた。
松田はあの日に誓ったんだ。親友である萩の仇を取ると。
私も同じ。
松田の手助けをすることが私なりの復讐。
今、私に出来ることだと信じてるから。