第10章 私のせい
___3年前
「さーん!なんか警備部の人が、」
「警備部?このクソ忙しいときに誰よ」
電話がけたたましく鳴り響き、人相の悪い人間が右往左往としている刑事部捜査一課のフロア。しかも強行犯捜査三係ともなると、関係者以外は中々立ち入らない。強面の厳つい人間が犯人探しに躍起になっている様は、言わずもがな人を寄せ付けないのだ。
そんな中警備部が、しかも私に用とは一体誰なのか。
「さぁ、なんか機動隊って」
「あぁ…わかった、今行く」
機動隊となれば話は別だ。思い当たる人物がハッキリと浮かぶ。
「お待たせ。なんか用?松田」
「いやぁ、捜査一課はピリピリしてて嫌だね」
天パにサングラス。
相変わらずの風貌にこのムカつく口調。
いつまで経っても変わらないな、こいつは。
「ちょっと顔かせ」
「はあ、早めに済ませてよ」
こんな様子ではあるが、一応機動隊の中ではエースを張る存在だ。
見るからに忙しいこちらの様子などお構い無しに連れ出すその無神経さに、果たしてエースを任せていいのか首を傾げざるを得ないが。
「で、なんの用よ?」
「お前らの所に毎年FAXが送られてくるらしいじゃねぇか。
3年前に3、次に2、そして昨年は1」
4年前の爆弾事件の後、捜査一課に毎年1枚ずつ送られてくる、数字を大きく印字しただけのFAX。
捜一のみんなはただの悪戯だと言っているが、正直、私はそうは思っていない。
「あれは、爆弾のカウントダウンだ。
奴が動き出すとしたら今年、それも4年前と同じ11月7日だと俺は睨んでる」
私も全く同じことを考えていた。
「だから、捜査一課の特殊犯係に何度も転属願いを出してんだが…」
「そんな理由で、転属願いが受理される訳ないわね」
基本、警察官の異動は自身の希望が通ることはほぼ無い。
上司から見た適性や、その他の状況を鑑みた上で決まるのだ。
私的な理由での転属願いなど相手にもされないだろう。
「それで、あんたの異動を私が根回ししろって?」
「…俺は、あいつの仇を取らなきゃならねぇんだ」
松田は私の目を真っ直ぐに見てそう告げた。
「はあ、そんなの無理に決まってるでしょ
……と、言いたいところなんだけど、実は当てがあるのよね」