第9章 忘れたことなんて
「第1現場機動隊、到着しました」
パトカーと共に、側面に“警視庁”と印字された車両が現場に入ってくる。
車両のドアが開き、中から爆発物処理班の隊員が出てきた。
真っ先に目がいくのは、天パにサングラスのあいつ。
相変わらず分っかりやすいな。
遠目に姿を確認して安堵する。
卒業してからまだ1ヶ月と少しだが、久しぶりに見るその姿に話しかけに行きたい欲はあるものの、今は職務中であるため勝手に持ち場を離れる訳には行かない。
これが終わったら、他の3人も誘って飲みにでも行こうか。
ゼロとヒロは忙しいみたいだから、誘っても来るか分からないけど。
大仕事を終えた松田と萩には私が奢ってやってもいい。
いや、やっぱり伊達と割ろう。
あいつら馬鹿みたいに食うから相当な出費になりそうだ。
場所は近くの居酒屋かな。焼肉が食べたいところだけど、スーツに臭いが着いたら嫌だし。
よし、警視庁近くの安くて美味しい居酒屋を後で調べておこう。
いや待て、このテロの犯人が特定出来ていない中、私に休みは来るのだろうか。
もしかして、こっから徹夜で働かされるのでは…?
残念、飲みはまた今度だな。
ま、あいつらなら誘えばいつでも来るだろうし。
その時は、私の労いも兼ねて伊達に全部奢ってもらおう。
そんな下らないことを考えていると、遠くから「どした、萩原!!」と、松田の声が聞こえた。
萩と電話しているようだけど、何かあったのだろうか。
そうして、その数秒後
ドカンッ!!!!!!
「えっ」