第42章 決意と
この場にいることは分かっていた。だがこんなにもあっさり再会出来るとは思わなかった。
まだ無事だったことにほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、握られていた手首が不意に解放される。
手を引かれ連れてこられたのは、出口の扉の前だった。
「……今すぐに帰れ」
セットされたブロンド。
スタイリッシュなタキシード姿。
誰もが振り返るほど洗練された出で立ち。
そこからは想像もできないほど、怒りが込められた声色。
そのあまりの気迫にヒュッと息を呑んだ。
……だが、ここで折れる訳には行かない。
「……ねぇ、提案なんだけ――」
「帰れ」
私の言葉をかき消すように、強い声で言い放たれた。
その圧に負けないよう、私も一歩も退かずに睨め上げる。
「話聞いて。じゃないと……このまま走って戻ってあなたに襲われたって叫ぶ」
そうしたら、動きづらくなるんじゃない?
わざと挑発気味にそう言うと、彼は僅かに眉をひそめた。
残念だが、こっちだってなりふり構ってられないんだ。
「ここには組織の任務で来てるんでしょう?誰からの指示なの」
「答えるわけないだろ」
「このままあなた一人で会場にいても目立つんじゃない?あの会場のほぼ全員が女性を連れてるんだから。任務にも差し支えるかもね」
彼の視線が鋭くなった。
「……だから、自分が付き添い人になるって言いたいのか」
返事の代わりに、フッと笑ってみせた。
彼の眉間にさらに深い皺が刻まれる。
「悪い話じゃないと思うんだけど」
「馬鹿か!!ここがどういう場所か分かって言ってるのか!」
「もちろん分かってる!!……でも、そうしないと――」
───あなたが殺される。
口から出かけた言葉を飲み込んだ。
自分が危険だと分かれば、彼は尚更、私を遠ざけるはずだ。
絶対に1人にする訳には行かない。
「絶対に、邪魔はしないから」
彼はじっと私を見つめた。
「……お願い」
懇願の意を込めて、私もそ瞳を真っすぐ見つめ返す。
「……目的は?」
「……今は、言えない。後で必ず伝える」
見つめ合い、無言のまま長い沈黙が流れた。
ほんのわずかに目を伏せたあと、沈黙を破るように彼は小さく息を吐く。
「……絶対に、僕から離れないって約束できるか?」
「もちろん。約束する」
間髪入れず、私はすぐに頷いた。