第5章 諍いと義憤
「用がないなら戻りたいんだけど」
「……」
やはり話し出す様子がない降谷に痺れを切らし、が歩き出した。
「っ、待って!」
そう言って再び腕を掴む降谷。
「……さっきは、ありがとう。
まさか、があんな風に思ってくれてるなんて思わなかった」
頬を少し赤く染め、恥ずかしそうに顔を逸らす。
「ま、まさか、聞いてたの…?」
「聞いてたと言うか、聞こえた」
「…まじかぁ……」
空いている方の手を顔に当てその場にしゃがむ。
それに合わせて降谷もしゃがんだ。
___数分前
離れた所から聞こえてくる、同じ教場の奴らの賑やかな声。
『やっぱ、天才は俺らとは違うんだよ。違う世界の住人って言うか』
『俺らみたいな下の者には近づきたくなさそうだし』
降谷の事を言っているのは明らかであった。
「何なんだあいつら」
「ちょっと俺いってくる」
すごい剣幕で立ち上がる諸伏を静止し、静かに首を振る降谷。
「いいよヒロ。いつもの事だろ」
「でも…!!」
「ほら、ご飯があと少し残ってるぞ」
そんな降谷の様子に、再び席に座ってご飯を食べる諸伏。
すると突然
バンッ!!!と、机を叩く大きな音が響いた。
『__ゼロの何が気に食わないか知らないけど、今のあの成績は、それ相応の努力を積み重ねて得たものなの。
天才なんて簡単な2文字で片付けていいようなものじゃない__』
のそんな声が聞こえた。
唖然とその様子を眺める3人。
「ヒロ」
「ん?」
「僕、とちゃんと話してくる」
「うん、行ってらっしゃい」
そう言って走り出す降谷。
「あ!食器の片付け頼んだ!!」
「うん!了解!!」
こちらに振り返ってそう叫び、再び走っていく。
「あいつらも、大概不器用なだけなんだよな」
「だね
ちょっとだけ妬けちゃうなぁ」
______
「恥ずかしすぎるんだけど……」
片手で顔を覆っていても、赤くなった耳までは隠すことが出来ない。
そんなの頭に優しく手をのせる降谷。
「僕のために怒ってくれたんだよな」
「……当たり前じゃん。大切な仲間なんだから」