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【名探偵コナン】sangría

第42章 決意と



ますます分からない。
連れがいないこの状況では、余計な疑いを招くだけだ。
それでも彼女が僕をここに置いていった以上、任務遂行は絶対条件。
全く、面倒くさいことになった。

しばらく会場内を彷徨いていると、ふと、入り口近くが静かにざわめいた。
場の空気がわずかに揺れ動く。
僕は自然な動作でそちらに目を向けた。


───次の瞬間、思考が止まった。


シルクのドレスが、ライトを浴びてやわらかく輝いている。
ゆっくりと歩みを進めるたび、布がなめらかに揺れ、周囲の人々の視線が自然と彼女に引き寄せられていく。
堂々としたその佇まいは、まるでこの場の中心に立つべくして現れた存在のようで、きっと誰もがその姿に魅せられていた。


「……なぜ、ここに…」


静かにそう呟く。

息が詰まりそうになった。
指先が、わずかに冷たくなるのを感じる。

……まさか、ベルモットが彼女を連れてきたというのか。
一体何故?何の目的で?
もしそうだとして、どうして彼女は大人しく着いてきたんだ。
ただでさえ、本日の任務は重鎮の暗殺だ。そんな危険な場所に彼女が居ていい訳が無い。
ましてやあんなに目立ってしまっては、余計な注目を集めるだけだろうに。なんだあのドレスは。自前か?だとしたら趣味が悪すぎる。あまりにも露出が多すぎる。

そうこうしているうちにも、彼女はゆっくりと歩みを進めて会場を見渡した。
その一つ一つの所作全てが、目を引くほど洗練されていた。


言いたいことは山ほどある。すぐにでも彼女の元に駆け寄りたい。
だが、咄嗟に動けなかった。
最悪なはずのこの状況で、それでも僕は、その美しさに釘付けになってしまっていたんだ。
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