第41章 真相を知るとき
ポスッと小さく音がした。
左肩に重みを感じて目を開けると、さっきまで近づいてきていた頭が乗っかっている。柔らかいブロンドが頬を掠めて少しくすぐったい。
「危なかった……」と、微かに耳元でそう聞こえた。
ふぅと小さく息を吐いて、頭が持ち上がる。
「……驚かせたか?」
眉を下げて、少し申し訳なさそうに私を覗き見る。
「……心臓、飛び出るかと思った」
素直にそう答えると、ゼロはふっと小さく笑った。
「驚かせたのは、悪い。
その……横顔が、すごく綺麗だったから、見惚れてたんだ」
そう言いながら、優しく微笑む。
頬が仄かに赤らむのを感じた。相変わらず心臓はその存在を主張を続けるが、嫌な感じは全くない。寧ろ、高鳴るこの鼓動に心地良さすら感じる。
それからは手を繋いだまま砂浜をゆっくり歩いた。足元に転がる貝殻を拾い上げ、指で砂を払い、しばらく眺めてから元の場所へ戻す。何度かそんなことを繰り返した後、ふと海に入りたいと言うと「寒いから駄目だ」と即座に却下された。少し駄々をこねてみたら、「手で触るくらいならいいか…」と渋々許しをもらえた。
波打ち際まで近づき、慎重に寄せては返す波を見極めながらそっと手を伸ばす。指先に触れた海水は、思わず身震いするほど冷たく、それでいて驚くほど澄んでいた。いたずら心が湧いて、小さく水をはねかける。すると、思った以上の量をやり返され、スウェットの袖がじんわりと濡れた。でもそれも借り物、ましてやゼロから借りたものだから気にしないことにする。
潮風がゆるやかに頬を撫でる。ふと顔を上げ、もう一度、広がる海を眺めた。大きく息を吸い込み、静かに吐き出す。限りなく続く大海原の景色を、しかと目に焼き付けた。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
行きと同じ、二時間のドライブ。
今度は2人でたくさん話をした。ここ最近で遭遇した事件の話、そこに必ずコナンくんがいる話、最近の子は携帯2台持ちらしいという話、食生活や料理の話、特に買い溜めや作り置きの話、犬を飼いたい話、そのために必要な準備の話……本当に何気ない会話をした。
そうすると二時間なんてあっという間で、気づいた頃にはゼロの家に到着していた。