第41章 真相を知るとき
仕事に追われて気が付いたら日が昇っていることは、今までに数えきれないほどあった。その時に見る朝日は、正直絶望だ。
あぁ、また家に帰れなかったと、嘆く材料でしかなかった。
でも、今目の前で昇る太陽は違う。
そこには確実に温度があって、私の中の絶望を溶かしてくれている。
暗闇の中で彷徨う私を照らして、導いてくれる。
大げさでもなんでもなく、ただただこの光に救われるような、そんな気がした。
「ありがとう。連れてきてくれて」
握られる手を強く握り返して、隣に並ぶゼロにそう伝える。ゼロは一度目を見開いて、それからもう片方の指の背で私の頬を撫でた。
「……やっと、笑ってくれた」
そう微笑むゼロは、心底嬉しそうだった。
それが、すごく嬉しかった。
「覚えてる?警察学校の時、みんなでまた海に行こうって話したの」
「もちろん」
「私、あれ以来だ。ちゃんと海を見るの」
「僕もだ」
約束をした翌年に、萩原が殉職した。
そこから全員が全員忙しない日々に見舞われて、なんとなく、誰もあの頃については触れなくなった。
それでも何度か思い出して、懐かしんで、行ってみようかなって考えて、でもやっぱり1人で行く気になんてなれなくて。気が付いたら7年が経ってた。
「……やっと来られた」
すごく時間が経っちゃったけど、それでもまた、大切な人と海を眺めることが出来た。
太陽が全て顔を出した頃には、さっきとは打って変わって辺りが明るくなっていた。見上げると、真っ青な空には雲一つない。
心地いい音を響かせながら寄せて返す波を見ていると、ふと隣から視線を感じた。
ん?と振り向くと、ゆっくりと手が伸びてくる。親指でそっと唇をなぞられ、胸の奥が小さく震えた。真っすぐに見つめられる視線は穏やかで、どこか熱を感じる。その熱に浮かされそうになると、段々と端正な顔が近づいてきた。確かめるように頬を撫でられながら、本当にゆっくりと距離が縮まる。スローモーションにも思えるそれに、心臓がうるさく警笛を鳴らしている。
吐息が触れそうなほど近づいた瞬間、高なる心臓を抑えるように息を止めて、思わずぎゅっと目を瞑った。