第41章 真相を知るとき
「………私も、行きたい。海」
私の言葉を聞いて、ゼロは嬉しそうに微笑んだ。
――――――
相変わらずオーバーサイズのスウェット姿のまま、愛車のRX-7に乗り込んだ。
お馴染みのこの車。
無人探査機はくちょう不正アクセス事件の際に跡形もなくぺしゃんこになったはずなのに、どうしてかその美しい車体を取り戻している。
ふと風見さんの顔が浮かんだ。どんな魔法を使ったのか知らないが、あの人も相当苦労しているんだろうなと、勝手に少し同情した。
仄暗い街中を、真っ白な車体が走りぬける。
二時間ほどのドライブ。
最近ポアロに来たお客さんの話、新作で出すために試作中のメニューの話、風見さんの趣味の話、コナンくんに助けられた話、好きなカレー屋の話、最近よく同じ犬に遭遇する話………他愛のない話をたくさんしてくれた。
私はそれを聞きながら、時々窓の外を眺めて、時々目を瞑って、時々ゼロの横顔を眺めた。
「着いたぞ」
そう言われて外を覗くと、ほんのり明るい空とゆっくりと寄せて返す波が見えた。
車から降りて、砂浜に足を踏み入れる。サクっと心地いい音を鳴らして足が少し沈み、同時に冷たい風が頬を撫でた。
私たち以外に人はいない。
普段なら賑わっているであろう海岸が、今は静かに波の音だけを響かせていた。
「まだ少し暗いな。危ないから手、貸して」
そう言って私の手を取り、ゆっくりと引かれる。
二人分の足跡を残しながら、波打ち際までゆっくり歩いた。
顔を上げると、深い藍色の空がうっすら色づき始めている。
ぼんやりとした空と海の境目を眺めていると、一筋の光が顔を覗かせた。淡く光る境界は、冷たい夜を塗り替えるように徐々に辺りを照らしていく。
まばたきすることも忘れて、私はその光景に目を奪われた。
「………きれい」
波の向こうの地平線が光って、揺れる波がキラキラとその光を反射する。空は清々しいほどの青を取り戻し、雲は太陽の光を受けてほんのりと色づいている。
眩しいほどの光が、私の顔を暖かく照らしだした。
少しずつ少しずつ、ゆっくりと時間をかけて朝日が顔を出すその様は、今までにないくらい、とても……とても、綺麗だった。
「……こんなに綺麗な朝日、初めて見た」