第41章 真相を知るとき
いくらか車を走らせると、街灯の横に小さくうずくまる背中を見つけた。急いで駆け寄り、気休め程度に着ていたジャケットを頭から被せる。
触れた両頬は冷たくて、赤くなった目には涙の跡がある。
怪我が無いことだけが幸いだった。
傍にいてやれなかった不甲斐なさと、無事だった安心感を抱えながら、強く抱きしめた。長く雨ざらしにされた体は氷のように冷たい。それが、すごく悔しかった。
泣いている姿を最後に見たのは、一体いつだったか。
卒業した時か、仲間の訃報を聞いた時か。
きっとそれ以降もたくさん涙を流したことだろう。
人前では見せないが、人並みに涙を流す人間であることを知っているから。
それを拭えなかったことが悔しい。乾いた跡に指を滑らせることしか許されないのが、悔しい。
水音に紛れて泣いている今だって、それを壁を隔てて聞くことしか出来ない。その壁を乗り越える資格なんてない。
用意した着替えとタオルを手に持ったまま、その場に力なく腰を下ろした。
ーー…守りたい。
下らないことで、ただ無邪気にずっと笑っていて欲しい。その隣で一緒に笑って、その笑顔をずっと見ていたい。
泣かないで欲しいとは言わない。言えない。ただ、泣くときはどうか僕の腕の中で泣いて欲しい。そうすれば、零れる前に拭えるから。
それが難しいことだということはここ数日で、いや数年で幾度も実感した。
きっと叶わない願いだと思うこともあった。いや、今も思ってる。
隣にいるべきは僕ではないと、思うことがある。
でも、どうしたって手離せないんだ。
零れ落ちていく中で、最後に残った宝物だから。もう絶対に失いたくないから。
何度も縋ってしまう僕を、どうか許してくれ。
――――――
息を整えて風呂場から出ると、着替えとタオルが用意されていた。ありがたくそれで水気を拭い、袖を通す。
ゼロのサイズであろうが故、ジャージの袖とズボンの裾をダボダボ余らせながら脱所を出た。
「お風呂、ありがとう」
「あぁ……って、やっぱり大きかったか」
そう言いながら立ち上がると、私の元へ来てぶかぶかの裾を袖を丁寧に捲ってくれた。
「悪いな。今はそれで我慢してくれ」
今度用のを用意しておくから。
続けて言われた言葉に目を見開いた。