第41章 真相を知るとき
私の言葉にえへへと頬を掻くヒロ。
「音楽が好きだったんだ。だから続けられた」
確かに、ギターを見つけた時も演奏している時もそれはそれは嬉しそうな顔をしていた。これまで続けてきたということは、余程音楽が好きなんだろう。
…胸を張って好きだと言えるものがあるって、いいな。
「は、音楽好き?」
ギターのネックに頭を預けて、優しい目でヒロが微笑んだ。
「……うん、好き」
ヒロが奏でる音楽が、好き。
そう続けると、ヒロは1度目を見開いたあと「そっか」と呟いてそのつり上がった猫目をより一層細めた。
「ねぇ、もっと聞かせて?ヒロのギター」
「もちろん」
私は、ヒロが演奏するギターならずっと聞いていられる。
だってこの音が、この横顔が、すごく好きだから。
そうして私達は、この薄暗くて埃っぽい空間でしばらく音を奏で続けた。
そして言うまでもなく、戻りが遅いという理由で教官にしっかりとどやさせたのだった。
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「……?」
はっ、と気がついた時にはどれほど時間が経っていたのか。いや、実際はほんの数刻だろう。
ぼーっとギターを見つめていたらしい私を心配するように、ゼロが顔を覗いてきた。
「な、なんでもない」
昔を思い出していた事を悟られたくなくて、思わず顔を逸らしてしまう。
「先、お風呂もらうね」
そのまま急いで立ち上がり、脱衣所へと駆け込んだ。
引き戸を閉めてそのまま背中を預ける。
俯いていると、瞳を膜が覆った。急速に量を増していくそれは、私の視界を酷く歪ませる。
このままでは零れてしまうと思い、急いで仰いだ。瞬きひとつでもすれば目に溜まったものが押し流されてしまうだろう。そうはさせまいと、必死に目に力を入れる。
そのまま急いで服を脱ぎ、風呂場へと足を踏み入れた。そして真っ先に熱いシャワーを頭から被る。こうすれば、何が流れ落ちようと全て打ち消してくれるはず。
雨で冷えきったこの体にはシャワーの温度はとても熱かったが、それも数秒浴びていればなれるものだ。
「……ヒロ…」
髪を伝って顔を伝って体を伝っていく水を眺めながら、我慢していたその名を口に出した。