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【名探偵コナン】sangría

第41章 真相を知るとき


______

「最悪」


数多の本やらファイルやらが鎮座する資料室にて、私はぽつりと零した。「まあまあ」と私を宥めるヒロの声が背後から聞こえる。
私達は今、絶賛教官からのおつかいを遂行中だ。たまたまヒロと2人で廊下を歩いていたところを、運悪く捕まってしまったのである。
明日の授業で使用する過去事件の資料を教官室までもってこいとの事。御丁寧に持っていく事件のリストまで渡されている。
そう、つまりは雑用だ。


「はぁもう、絶対後で松田達に遅いって怒られるじゃん」

「まあまあ、鬼塚教官からの頼みなんだから仕方ないよ。俺達いつも怒られてるし、これくらいはやらないと」

「悪いのは大体ゼロと松田でしょ!!あいつらに頼めばいいのに」


文句を垂らしながら、ファイルの背表紙に指を添えて棚の端から端を渡っていく。
足元から頭の上までギッシリと詰められている中から、どうやって特定の資料を見つけろというのだ。空気も埃っぽいし。なんか薄暗いし。
やっぱり、最悪以外の言葉が見つからない。


「オレ奥見てくるね」

「はぁい」


まだリストの半分も見つかっていない。先が思いやられすぎて思わずはぁぁ、と特大のため息を零した。
すると「!」と私を呼ぶヒロの声が奥から聞こえてきた。呼ばれるままに私も部屋の奥へ進む。


「何?見つかった?」

「へへ、いいもの見つけちゃった」


そう言いながら上げた右手には、1本のアコースティックギターがあった。


「なんだよ資料じゃないんかい」

「大分ホコリ被ってるけど、弦もペグも生きてる。弾けるよこれ」


期待を裏切られた私を差し置いて、ヒロはキラキラした目でギターを弄り始める。


「何かリクエストある?」


あぐらをかいて期待するように私を見上げるヒロ。
……はぁ、君のその顔に弱いんだよ私は。


「じゃあ、国家」

「はは、毒されてるね」


静かに弦を弾くヒロの隣に、私も腰を下ろす。


「教官にバレても知らないよ?」


するとヒロは、宛らいたずらっ子の様な笑みを浮かべて人差し指を口の前に添えた。


「2人だけの秘密ね」


そうしてギターを構えると、丁寧に弦を弾いて一音一音を奏で始めた。
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