第41章 真相を知るとき
ものの数十分で、見知った真っ白い車が私を見つけてくれた。
濡れることを厭わずに、ゼロが車から出てくる。
急いで私の元へ来ると、羽織っていたスーツジャケットを私の頭に被せた。
「ビショビショじゃないか!体も冷たいし…」
そう言いながら、ゼロは両手で私の頬を包む。冷えきった私の頬には、その手が頗る温かく感じた。その温もりに浸りたくて俯こうとすると、それを阻むように包んでいた手で顔を上げられた。
「怪我は?」
真っ直ぐ目を見てそう問われる。
ふるふると首を横に振ると、ゼロは安心したように息を吐いてスーツジャケットごと私を抱きしめた。
先程までの頬の温かさが全身へと広がり、その心地良さに思わず目を瞑りそうになる。
「…車に乗ろう」
耳横でそう言うと、私の手を取り車へと誘導して助手席のドアを開けてくれた。
でも、このまま乗ればゼロの愛車を濡らしてしまう。そう思い乗り込むのに躊躇していると、ゼロが私の顔を覗いてきた。
「どうした?」
「いや、車、濡れちゃうから…」
そう答えると、ゼロが目を見開いた。かと思えば、何やらふふっと笑みを零す。
「そんなこと気にしなくていい。
それより、が乗ってくれないと僕がもっと濡れる」
あ、そうだった。ゼロは今私と同じく雨ざらしなんだ。
「ごめんっ、」と言いながら急いで助手席に乗り込む。
ドアを閉められ、フロントの方から回りゼロも運転席へと乗り込んだ。
被せられたジャケットを丁寧に折りたたんでいると、後部座席にあったらしいバスタオルを差し出される。ジャケットと交換で受け取ろうとすると、何やらいい事でも思いついたと言いたげにゼロが微笑んだ。
バスタオルは私の手に渡ることなく、代わりにゼロが大きく広げて先程のジャケットの如く私の頭に被せてきた。
その上からわしゃわしゃと乱雑に水分を拭われる。
「ち、ちょっと…」
されるがままの私が面白いのか、ゼロは珍しくははっと声を出して笑っている。仕事用に髪を纏めていたせいもあり中々にボサボサになってしまった。
拭いてくれるのはありがたいけど、もう少し丁寧にして欲しかったな。と、バツが悪そうに纏めた髪を解くと、今度は優しく手櫛で髪を整えてくれる。
なんだかそれが頭を撫でられているようで、とても気持ちが良かった。