第41章 真相を知るとき
その時、ポツポツと背中に冷たいものを感じた。
段々と増えていくそれは、あっという間に私の身体を濡らしていく。
どうやら、雨が降ってきたらしい。
今朝の天気予報では、雨が降るなんて一言も言ってなかったのに。
でもそのお陰で、押さえ込んでいたものが瞳から溢れ出ても雨に紛れてくれる。打ち付ける雨音が、うるさい心音を少しだけ和らげてくれる。
肌寒い気温の中での雨ざらしで、私の身体はすぐに冷たくなっていった。
「……ゼロに、会いたい…」
無意識に、そう零していた。
寒さ故なのか分からない震える手で携帯電話を取り出す。
電話の連絡先を開いて迷わず1番下までスクロールをすると、そこにはしっかりと『0』という文字が存在した。
……電話したら、出てくれるかな。
いや、こんな夜更けなんだから普通は寝ているだろう。そうでなかったとしても、きっと任務なり仕事に追われているはずだ。
邪魔は出来ない。
そう、頭では分かってはいる。
けど、一度口から出てしまったせいで、頭の中はその言葉でいっぱいなんだ。
雨粒が落ちる携帯の画面をじっと見つめる。
4コールだ。4コールで出なかったら、潔く諦めよう。
そう心に決めて、私は静かに電話マークを押した。すぐに鳴りだすコール音を、耳元で数えていく。
『……どうした?』
3コール目が鳴り止もうとしたときだ。
その声が聞こえた瞬間、鼻の奥がツーンと痛んで喉元に息が詰まった。
堰き止めていたダムが崩壊し一気に水が流れ出るように、抑えていた感情が溢れだしてしまう。
『?』
反応がないからか、心配するような声色のゼロ。
だが、どうしても声が出せない。応えたいのに、出てくるのは嗚咽を孕んだ吐息ばっかりだ。
「……あ、い、…たい…」
何度か深呼吸してようやく絞り出した声は、雀の如くか細いものだった。
『…分かった。すぐに行く』
そう言い残し、電話は終了した。