第1章 桜と出会いと
声のする方へ向くと、そこには長身長髪のイケメンが立っていた
「お隣、座ってもいいかな?」
「ええ、どうぞ」
特に断る理由もないので承諾する。
すると「失礼しま〜す」と彼が座り、その向かいに当たり前のように松田くんが座った。
相変わらず顔のガーゼやら絆創膏やらが目立つ。
「昨日、あ、もう今日か。ありがとね〜陣平ちゃんの手当てしてくれて。大変だったでしょ」
正直、すごく大変だった。
降谷くんに救急箱を渡した後すぐに松田くんのもとへ行ったのだが、「そんなのいらねぇ」の一点張りで中々受け取って貰えなかった。私も大人しく引き下がればいいものを、ああも頑なに断られるとこっちも意地を張ってしまうもので、
松田くんの顔を掴んで無理やり手当てを行ったのだ。
今考えると、結構なありがた迷惑だったなと少し反省…
「いいや!こちらこそ無理やりやっちゃってごめんね」
「本当だよ。こいつ結構な怪力だったからな。きっと前世はゴリラだゴリラ」
「…は?」
このか弱い女子に向かって怪力とは何事か。 ゴリラはお前の方だろうが。
松田の言葉に少しだけ、本当に少しだけイラッとしてしまい思わず声が出てしまった。
引きつった笑顔のまま硬直する。
こいつ、ムカつくな
「まあまあ陣平ちゃん落ち着けって。
ごめんな〜こいつ口は悪いけど根は良い奴だからさ、仲良くしてやって」
「まあ、萩原くんがそう言うなら」
「あれ、俺名前言ったっけ」
「萩原研二くんでしょ?初日に自己紹介してたじゃん」
「だとしてもまだ3日目よ?あ、もしかして、俺がかっこいいから印象深くて「いや、全員覚えてるの」ありゃ」
私は人より目と記憶力が良い為か、人の顔と名前を覚えるのが得意なのだ。1度名乗ってもらえれば、滅多なことがない限りは忘れないだろう。
「それすげーな」
さっきまで仏頂面でご飯を貪り食っていた松田がキラキラした目でこちらを見ている。
なんだか見てて飽きないふたりだな。
「私は、よろしくね」
「おっけーちゃんね。俺の事は気安く研二くんって呼んで」
「じゃあ萩で」
「わおガン無視。んで、知ってると思うけどこっちの天パが松田陣平」
「よろしく松田」
「早速呼び捨てかよ。まあいいや、よろしく」