第41章 真相を知るとき
「彼をビルの屋上へ追い詰めたとき、俺は自分もFBIの人間だということを彼に明かしたんだ。
だが彼は、俺の懐にあった拳銃を奪い、胸ポケットの携帯電話諸共自分の心臓を撃ち抜いた」
「……自分の、心臓を…撃ち抜いた……」
「そこに入っているであろう、家族や仲間の情報を守るために」
……拳銃で、自分の心臓を、自分自身で撃ち抜いた…?自ら命を絶ったっていうのか…?
頭で何度も反芻するが、一向に理解が出来ない。
……いや、身体が呑込むことを拒否している。この話が事実であることを、どうしたって認められない。
「……赤井さんは、その場にいたって事ですか…」
「あぁ」
「目の前で、彼は死んだということですか…?」
「…あぁ」
「じゃあなんで!!!…なんで、止めてくれなかったんですか…?
あなた程の人なら、自決させない道をいくらでも選択できたはずです…!!なのに、なんで…!」
勢いに任せて言葉を放つ私を、赤井さんは何も言わずにただ見つめていた。
分かってる。きっと赤井さんは、最善手を打とうと尽力してくれたはずだ。
けど、どうしたって恨んでしまう。
“もしかしたら生きていたかもしれない”と考えるだけで、ありもしないその可能性に胸が張り裂けそうになる。
どこに向ければいいのかも分からない、後悔にも似た憤りが溢れ出て止まらなくなる。
思わず立ち上がってしまったがために、力なくもう一度腰掛けた。
「……彼は…、強くて、聡明で、料理が上手で、仲間の為に本気で怒れて、周りを気遣うことが出来る、とても優しい人なんです」
隣で笑うヒロの笑顔が大好きだった。
私の名前を呼ぶヒロの声が、大好きだった。
大きくて温かいヒロの背中が……大好きだった。
全て、今でも鮮明に思い出せる。