第40章 絡繰箱
恐らく、友寄さんが話していた日記にも同じ仕掛けをご主人が施していたのだろう。
曰くご主人は照れ屋のようだから、自分が書いたページは指に引っ掛からず、飛んで読めないようにしていたのだ。
そんな中で友寄さんが1度見つけることが出来たのは、自分が書いたページを読みながら1枚ずつ丁寧に捲っていったからであろう。
「しかし小童、その仕掛けがしてある本がこの1万冊の中のどれか分からんと状況は変わらぬのではないか?」
「それも分かるよ。ね?さん」
「えっ!えぇ」
突然振り返り、私に話を振るコナンくん。
大方怪盗キッドに対しての牽制といった所だろう。仕方がない、バトンを受け取ってやるか。
私はゴホンと咳払いをし、宛らコナンくんのように語り始めた。
「いくら見つからない仕掛けをしていても、1度友寄さんがやったように1枚ずつ捲れば見つかってしまう。
しかし、ご主人は友寄さんに絶対に見つけられないと仰ったんですよね?」
「え、えぇ」
「であれば、友寄さんが絶対に捲らないページに挟んであるということになるわ」
「で、でも、奥さんが嫌いなミステリーや怪奇小説は昴さんと哀ちゃん、それにさんも調べたんですよね?」
「えぇそうよ。でも、友寄さん自身も念入りに調べたんじゃないかしら?紙を探すだけだったら、内容を読まなくても問題ないし」
「え、じゃあどんな本なの?」
「捲る必要が無いページのある本よ。そのページを読んでも意味が無いというか、そのページに書いてあることよりもっといいことを教わっているというか」
「料理本の、肉じゃがのページですね」
「沖矢さんご名答」
「なるほど。ご主人のお母さんからレシピを直伝され、尚且つご主人がその味をとても気に入ってるのなら捲る必要は無いわね。
それ以外の料理のページなら、さっきの見つからない仕掛けがあったとしても索引に書いてあるページ番号で探されたら見つかってしまうから」
「その通り!流石哀ちゃん」
ということで、数十冊ある料理本をいくつか取り出して手分けして肉じゃがのページを確認しようとしたその時、突然フッと図書館全体の照明が消えた。