第40章 絡繰箱
「ねぇねぇ、それってどんな曲なの?」
「それが、最後に主人がその箱を開けたのが10年以上前でしたから忘れてしまって…。
誰でも知っている有名な、童謡か何かだと思いましたけど」
童謡か…。海とか、紅葉とか、後はこいのぼりとか?挙げたらキリがないな。
ま、何にしても絡繰箱を誰にも悟られずに開けることは出来ないということか。
「まぁ例えこの鉄柵をすり抜け箱ごと宝石を持ち去ったとしても、この図書館の全ての出入口に設置した鋼鉄のシャッターが鉄柵と連動して降りるシステムになっておるから何人たりとも逃がしはせんよ!ハハハハハッ!」
なるほど、是が非でもこの絡繰箱を開けさせたいという訳か。
……怪盗キッドの力を利用してでも。
快斗くん。君、今回責任重大だよ。
「んで、この箱の開け方が書かれた紙っていうのは?」
「夜中、主人がその箱を閉めたあと、箱の図面に矢印や数字が書き込まれた紙を何かの本の間に挟んでいるのを見ましたので。後日、その紙が挟まっている本を書斎で探していたところ、主人に見つかり『君には見つけられない』と言われてしまいました。ですから恐らく、あの紙には箱の開け方が書かれていたと」
「しかし、何であんたの旦那はその宝石をあんたに隠してたんだ?」
「さ、さぁ?主人はとてもシャイでしたので…」
「はぁ?」
「あっ、いえ!月長石は愛をもたらす石だと言われていますので、そんな石を大切にしまっているのを見られたくなかったんじゃないでしょうか」
「まぁ、ご主人は儂の冒険仲間なんじゃが確かに恥ずかしがり屋じゃったのう。二人乗り人力飛行機で世界一周した時、マスコミに写真を撮られた時も儂の後ろに隠れて見切れておったしな」
ん?サラッとすごいこと言ってなかったか?
二人乗り人力飛行機で世界一周?何その偉業??
何で誰も突っ込まないんだよ。
「…で、キッドは来るって返事してきたんすか?」
「あぁ。“月下の奇術師の名に懸けて月長石を頂きに参上する”という予告メールが先程届いたわい」
だろうな。快斗くんがこんな案件を無視出来るはずがない。