第5章 諍いと義憤
パンッ
パンッ
耳を劈く破裂音が順々に鳴り響く
そう、恐れていた射撃訓練の時間がやってきてしまったのだ。
射撃場は、教場棟に隣接された術科棟内に設けられている。
使用される拳銃は装弾数5発のリボルバー式。
色々な種類があるが、その中でもよく知られているのがM360SAKURA、いわゆる「サクラ」と呼ばれるものであろう。
これは日本の警察の要請に応じてS&W社が制作したカスタマイズモデルである。
片手撃ち、両手撃ちそれぞれ離れた所にある的を狙って射撃していく。
「おい、あそこやべーよ」
「次元がちげぇ…」
そう話す先では、降谷とによる射撃戦が繰り広げられていた。
撃つ弾撃つ弾全てが的の中心に命中し、そのレベルの高さに教官も関心している様子である。
「あちゃー2人ともムキになっちゃってんなー」
「はぁ、言わんこっちゃない…」
諸伏が大きなため息とともに頭を抱えた。
彼が危惧していたのは、正にこの状況なのである。
「にしても凄いなあいつら」
「どんな集中力してやがんだ」
周りがざわついていることなどお構い無しに、着々と指定の弾数を打っていく降谷と。
しかし、ラスト1発となった時、気の緩みかの弾が少し外れたところに当たった。
と言っても、的にはしっかりと命中しているため高成績であることに変わりはないが
「チッ」
「ふっ、僕の勝ちだな」
舌打ちをすると、勝ち誇った顔で見下げる降谷。
その瞬間、の中で何かが切れる音がした
「…精密射撃はあんたの方が上かもしれないけど、動体視力は私の方が遥っっかに良いから!!
実践で出来なきゃ意味ないし、こんな訓練でそーんな勝ち誇った顔しちゃって?
はっ!!お子ちゃまですことー」
「負け犬がうるさいな、“こんな”訓練で外した奴が実践で出来るわけが無いだろう。大口を叩くのも大概にしろ」
大きな声で罵り合い、睨み合う両者。
もちろんその間に割って入れる者など居ない。
「なによ!!」「なんだよ!!」
「「ふんっ!!!」」
いつもの聡明な2人とは掛け離れた言い合いに、周りは困惑するばかりであった。