第39章 クッキング
帰宅した私たちは、早速買ってきたハムサンドの材料をキッチンに並べた。
「普通の徳用ハムに見切り品の8枚切り食パン……これで本当にあの絶品ハムサンドが出来上がるの?てっきり高級なパンとかハムを使ってるものだと思ってたんだけど」
「あぁ、まぁ見てろ。
まず、ハムは安くて構わないが出来るだけ脂の少ないものを選ぶんだ。そして、このハムにオリーブオイルを塗る」
そう言いながら、買ってきた徳用ハムにこれまた買ってきたオリーブオイルをヘラで満遍なく塗っていく。
「あー!ハムのあの濃厚な風味はオリーブオイルを塗ったからだったのね」
「それだけじゃない。
マヨネーズも一般的なものだが……」
ゼロは、朝買ってきたのであろう味噌を冷蔵庫から取り出した。
「え、味噌!?」
「このマヨネーズに、隠し味程度の味噌を混ぜる。
オリーブオイルと味噌の組み合わせは抜群なんだ」
なるほど。
この味噌マヨネーズのソースが、オリーブオイルを塗ったハムを引き立たせるハムサンドの要になるわけか。
「ところでは、サンドイッチを食べた時に中身が冷たいと味がよく分からないなんてことはないか?」
「あーあるある。コンビニで買った物とか結構そうかも」
「だが、これでその心配は無くなる」
そう言うゼロは、ザルにちぎって入れた普通のレタスをお風呂の温度程度のお湯へと漬けた。
「あーなるほど。ヒートショック現象ね」
「あぁ。こうすることで、パンに挟んでしばらくしてもレタスのシャキシャキ感が続くんだ」
こうして、サンドイッチの具が全て揃った。
後は肝心のパンだが……、
「ねぇ、このパン見切れ品で少し硬くなってるけど、本当に大丈夫なの?」
「全く問題ない、これだと安く済むからな。
それに、むしろ少し硬いくらいがベストなんだ」
「え、なんで?」
「サンドイッチを作る直前に蒸すんだよ。そうすると、よりフワフワのパンに仕上がる」
「へー。
で、既に蒸し上げたパンがこちらに……」
「無いぞ。そんなに便利であってたまるか」
「えー。でも、うちに蒸し器なんて大層なもの置いて無いですよ先生」
「安心しろ。
実は電子レンジで簡単に代用が効くんだ」
そう話すゼロが取り出したものは、底が浅い皿と割り箸だった。