第39章 クッキング
「ねぇ、さっきのあれ何?」
買い物を終えて帰路に就く間、私は問い詰めるようにゼロに問うた。
「何って?」
「店員さんとの会話よ!!もう、ペラペラ嘘ばっかり吐いちゃって」
「あー、あれは訂正するのも面倒くさいと思ったから店員さんに合わせたんだよ」
「いやだとしても!!あんな余計な情報はいらないでしょ!
年齢とか今年で7年目とか!」
完全にノリノリだったでしょうが。
全くもう、この人は朝から一体何がしたいんだ。
はぁ…と大きく溜息を着いて、宛らタコのように唇を尖らせる。
訳が分からないと訴えるように横にいるゼロを見やると、何故だかゼロは満足そうな顔を浮かべていた。
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【降谷side】
仕返しなんてどうでも良くなる、なんて昨日は思っていたが、やはりやられっぱなしは癪なので心ばかりのお返しをした。
本人は意地でも認めないだろうが、さっきの僕と店員さんとのやり取りを受けてはしっかりと頬を赤らめていた。そして、その赤みは今も尚残っている。
口を尖らせながらこちらを見るは、恐らく僕を睨んでいるつもりなんだろうが、僕からしたらそんなの可愛いとか愛らしいという言葉でしか表現出来ない。
まぁ、それを口にしたら「そんな事言うタイプだったっけ?」とどうせまた心配されるだろうから、胸の内に仕舞っておいてやる。
その代わりと言ってはなんだが、僕は買い物袋を持ち替えて隣で揺れている一回り小さい手を取った。
その瞬間ビクッ!!と驚いたように肩が揺れ、みるみるうちに頬は赤く染る。
「……調子に乗り過ぎだから」
そっぽを向き口ではそう言いつつも、微かに握り返されるそれに思わず頬が緩む。
この帰路が長く続けばいいのに、
と、柄にもなくそう思った。