第38章 執行人とその後
「いだッ!!」
「僕がそんなことする訳ないだろ」
「分かんないじゃん!私の色香にあてられて思わず手出しちゃったかもしれないじゃん!」
するともう一度おでこにデコピンを食らった。
だが、心做しかさっきより威力が弱まってる気がする。
痛いのに変わりは無いけど!
「ばか」
それだけ言って、ゼロは布団から出て行った。
赤くなったであろうおでこを押さえながらその姿を眺める。
なんで怒ってんだろ?冗談なのに。
……うっ、なんかだんだん気持ち悪くなってきた。
二日酔いが遅れてやってきたか、くそ。
おでこにあった手を口に持っていき、布団の上で悶える。
うぅーぎもぢわるいと唸っていると、ペットボトルを持ったゼロが再び寝室へと入ってきた。
「はぁ…だから昨日水飲めって言ったんだ。
はいこれ、1本全部飲め」
差し出された未開封の水を受け取り、ちびちびと飲んだ。
一気に全部は流石に無理。お腹タプタプになっちゃう。
「朝食は?食べれるなら食べた方がいいけど」
「……たべたいです…」
「ふっ、食い意地張ってるのは昔のままだな」
こちらとしては笑ってなんていられない。
気持ちは悪いが腹は減っている。最悪の状態だ。
「うぅ、だずげで。頭痛い」
「自業自得だろ。
味噌汁でも作ってやるから待ってろ」
そう言ってキッチンへと向かったゼロだが、すぐに踵を返して戻ってきた。
「忘れてた。この家今何も無いじゃないか。
軽く買い物に行ってくるが、一緒に来るか?」
「無理」
「だろうな。何か欲しいものは?」
「………納豆、食べたい」
「了解」
そうしてゼロは近所のコンビニへ出かけ、私はトイレへ駆け込んだ。