第38章 執行人とその後
疲れ切ってることを承知で家に押しかけたんだ、片付けくらいはやってやるか。
そう思い、寝かせたから離れようとした。
………が、それは叶わなかった。
いつの間にか僕のシャツを掴んでいた手。その手は驚く程固く握られていて、僕がどんなに開こうとしてもビクともしない。
忘れていた、の馬鹿力を。
数分その固い拳と格闘していたが、これは諦める他無さそうだ。
仕方なく、を寝かせたベッドに僕も潜る。
布団をの首辺りまで引き上げると、スルスルと僕の胸に擦り寄ってきた。
まるで小動物のような行動に、思わず頬が緩む。
そんなをぎゅっと抱き締めた。
___『俺が、さんの傍にいる』___
……上等だ。
誰にも渡しはしない。
僕が、傍でずっとを守る。
そう、決めたんだ。
そうして僕は、腕の中にある温もりをもう一度強く抱き締めて瞼を閉じた。
______
【side】
何だか、とても温かい。
髪の間をスルスルと指が通り抜け、優しく頭を撫でられている。
すごく、心地が良い。
そんな温もりに浸っていると、不意に瞼に柔らかい物を感じた。
それを合図に、ゆっくりと目を開く。
「おはよう」
眠さでまだ半開きの私の目が捉えたのは、とても端正なお顔。
ん?ここはどこだ?なんで目の前にゼロの顔があるんだ?一体どういう状況だ?
寝惚けながらに必死に頭を回転させるが、一向に理解ができない。
「……なぜ…?」
色々集約した結果、最も簡潔な言葉が口から出てきた。
眉間に皺を寄せて必死に考える私を見て、ゼロが大きく溜息を着く。
「昨日の夜のこと、覚えてないのか?」
昨日の、夜……
その瞬間、私はバッ!!と布団の中の自分の姿を見た。
あ、良かった。服は着てるわ。
どうやら過ちは無かったらしいことにほっとしていると、おでこにデコピンという名の大きな衝撃を食らった。