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【名探偵コナン】sangría

第38章 執行人とその後



しばらくすると、負傷した左腕に包帯を巻いたゼロが出てきた。

扉のすぐ前で私が待っていたことに少し驚いた様子だったが、左腕を前に出して「大した事なかったよ」と微笑んだ。
あんな量の出血をしておいて何が大したことないだとは思うが、その顔を向けられてしまえば私は何も言えなくなってしまう。
返事の代わりに、ゼロの右手を取ってもう一度指を絡めた。



後はもう、それぞれが帰る場所に帰るだけだ。

ここまでは私の我儘を押し通して無理やり着いて来れたものの、これ以上はそういうわけにもいかない。ゼロにだって風見さんにだって、やらなければいけないことがある。もちろん私にだって。
分かってるけど、でも、この手を離したくない。
温もりを、心音をずっと傍で感じていたい。

しかしどんなにそう願っても、歩いているうちに出口はきてしまう。
正面玄関の自動ドアが開いて、肌寒い風が頬を掠めた。






「さん、迎えに来ました」



出てすぐの駐車場に立っていたのは、紛れもない私の部下。


何で、青柳がここにいるの…、

声に出さずに驚いていると、横に立つゼロが「僕が彼を呼んだ」と私に告げた。



「帰りましょう」


青柳のその言葉が、束の間の時間に終わりを告げる。




「……やだ…」


抗うように、繋いでいる手に目一杯力を込めながらそう言い放った。



「」


動かずに俯いていると、ゼロに名前を呼ばれた。
さっきみたいに優しく、でも諭すように少し厳しい声色で。



「、君は帰るんだ。
きっと、明日からは今日よりもっと忙しくなる。サミットのことも、無人探査機のこともまだ完全に終わったわけじゃない。これからすべてに片を付ける必要がある。
その時、警視庁は必ずを必要とするはずだ。
だから、休めるうちにしっかり体を休めてくれ」



「お願いだ…」と懇願するゼロの声。


……“君は”か。
いつもそう。この人は、自分のことを全く勘定に入れない。
私への心配だけで、私が心配することは考えていない。
私だって、同じなのに。


繋いでいる手をぐっと引いて、私はその胸に顔を押し付けた。
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