第35章 新曲
段々とコナンくんの言いたいことが分かってきた。
そして真相がコナンくんの考えている通りならば、恐らくパイプ椅子には……
「あのごめんなさい、そのパイプ椅子の座面の裏を見せてもらえるかしら」
「え、あぁ少しなら構いませんよ」
丁度パイプ椅子を運んでいた鑑識からそれを受け取り、ひっくり返して座面の裏を確認した。
やはり、思っていた通りのものがくっついている。
すると、私が持っているパイプ椅子をコナンくん、沖矢さん、安室さんが揃って背後から覗き込んできた。そうして“なるほどな”と言うように全員がニヒルに微笑んだ。
私を含め全員、この事件の真相に気が付いたようだ。
「とまぁ言われた通りにしてはみたが、本当に1人の力で吊り上げられるのかね」
今ステージ上では、椅子に座った高木くんの体にスポットライトが付いたバーに渡したロープの片方を結びつけているという状況である。
これから、波土さんの体を本当に1人の力で持ち上げられるのかという実証実験が行われるのだ。
まずはステージの上で上から垂れているロープで輪を作りながら持ち、下の輪を上の輪に手前から潜らせるように2回巻き付ける。そして下側の輪を捻りながらその輪の中に輪より下に垂れているロープの途中の部分を通し、出来た大きな輪の先を2メートルくらい下の客席の手すりに引っ掛ける。次に輪でない方のロープを手すりの内側に引っ掛けるように通して再びさっきと同じ輪を作り、出来た大きな輪とロープを今度は4メートルくらい離れた席の手すりに引っ掛ける。そして3つ目の輪を作ってロープの途中を通し、出来た大きな輪だけを持って今度は8メートルくらい離れた席の手すりに引っ掛ける。そうすれば、後は3番目に作った小さな輪のところに戻り余ったロープを引くだけ。
実際この場で1番非力であろう園子さんが引っ張って、見事に1人で高木くんの体を吊り上げることが出来た。