第35章 新曲
「拾うの手伝うわ」
「あぁ、すみません」
私が駆け寄ると、蘭さんと園子さんとコナンくんも散らばった証拠品を拾うのを手伝いに来てくれた。ボールペンなどの細かい物から、舞台上においてあった束ねられたロープまで様々転がっている。
その中には波土さんの免許証もあり、コナンくんがそれを拾い上げた。コナンくんの手にあるそれを背後から覗いてみる。
あーそう、これだ。この近づき難いオーラ満載の顔。
免許証の写真は、やはり私が以前目にした波土さんそのものだった。
この後、梶谷さんの鞄の中身の確認が行われた。
「ふむ。あなたのカバンにあったビデオカメラの画像を見ると、ホールに入る波土さんを隠し撮りしていたが波土さんに見つかりカメラを取り上げられそうになった。そういうことですな?」
「あぁ」
目暮警部が手に持つデジカメには、ホールのドアへと歩く波土さんがこちらに気付いて迫ってくる数枚のコマ撮りの写真が記録されていた。
……ん?
免許証の写真とこの写真でなんだか印象が違うな。蘭さんたちの言う通り、雰囲気が多少柔らかくなった気がする。何でだろ。
「ねぇねぇ鑑識さん!」
すると、コナンくんが現場の品を運び出している鑑識へと声をかけた。
「ん?なんだいボウヤ」
「あのねーー………ーとか落ちてなかった?
梓姉ちゃん片方だけ落としちゃったみたいなんだけど」
耳打ちをしたせいで全ては聞き取れなかったが、後半部分が気になった。
ーー……“片方だけ落とした”、か。
という事は、コナンくんは何か2つセットになっている物を探している。恐らくは、波土さんの印象を変えた何か。
そう思って、私は向こうに立っている容疑者3人へと目を向けた。
その時円城さんの背中で何かがキラリと光を反射した。
「いや、そんな物はステージには落ちてなかったよ」
「じゃあ無くなった物は?例えば針金とか軍手とか」
「あぁ!スタッフがステージに置いていた工具箱からその2つが無くなったらしいよ」
「じゃあさ、工具箱の横に立ててあったパイプ椅子もスタッフさんがそこに置いたの?」
「あぁいや、もっと奥に置いたらしいんだけど」
針金と軍手、それにパイプ椅子……