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【名探偵コナン】sangría

第35章 新曲



一体誰なんだこの人は。
多分、以前桜の木の下で遭遇した妊婦さんと同一人物なのだろう。何故、毎回ゼロの近くにいるんだ。今日だって何の目的でここに来たんだ。


ーー……組織の人物か……!!

多分、いや確実にそうだ。
今日ここに来たのだって、きっと私たちと同じ理由。沖矢さんとコナンくんが話していたように『ASACA』に何か組織の秘密が隠されているんだ。
ゼロと一緒にいるのは恐らく監視の意味も兼ねているのだろう。

とにかく、今私の目の前にいるのは組織のメンバー。
もしかすると、イリスから情報をもらった幹部のうちの1人かもしれない。


そう思った瞬間、立ち去ろうとする彼女の腕を掴んだ。


「……あなたは、一体誰なんですか…」


震える唇をどうにか動かして、でも目だけは真っ直ぐに彼女を捉えてそう聞いた。

目の前に、正に私の知りたい情報が溢れている。こんな千載一遇の好機を逃してはならない。
ビビるな。落ち着け。震えよ止まれ。


私のこの行動に驚いたのか、彼女は大きく目を見開いた。
その後ふっと笑って顔を伏せると、一呼吸置いて次に顔を上げた時には打って変わって満面の笑み。その顔は宛ら梓さんそのものであった。


「秘密ですっ」


可愛らしい梓さんの声で、様子でそう答えられてしまう。



「すみません!梓さんも字をお願いします」

「はぁーい」


直後、高木くんが彼女を呼んだ。例の筆跡鑑定のための順番が回ってきたようだ。
彼女は私手を難なく振りほどき、呼ばれた方へと歩いていく。

そんな彼女から目を離せずにいると、今度は私が突然腕を掴まれ引き寄せられた。思わず「うわっ!」という情けない声が出てしまう。


「勝手に離れないでください」

「お、沖矢さん…!」


すると、沖矢さんは私の耳元に口を持ってきて内緒話をするように話し出した。


「君も分かっているだろう、あの女には近づくな。目をつけられれば君も、もちろん俺も危険になる。勝手な行動は慎め」

「は、はい…」


私から近づいたわけじゃないんだけどな。まぁ彼女の腕を掴んで引き留めたのは私だけれども。


「あと、俺から絶対に離れるな。いいな」

「分かりました」


赤井さんの口調で諭すように言われてしまえば従う他ないだろう。もちろん、私のせいでこの人や他の皆が危険になるのなんて望んでいるわけが無い。
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