第35章 新曲
「あ!そうそう!
さんってロック好き?」
すると突然、園子さんがクルっと振り向いて私に話しかけてきた。
「ロック?
まぁ、音楽は好きだけど」
「じゃあ今度、波土禄道のリハーサル見に行かない?」
「波土……あぁ!有名なロックミュージシャンの!」
「そうそう!その波土禄道が5年ぶりに新曲を出したのよ!なんか、17年前に作った曲にやっと歌詞つけて今度のライブでお披露目するんだって!」
「でも、その曲のタイトルがなんか変わってるんだよね」
「変わってる?」
「その新曲のタイトルが『ASACA』っていうらしいんですけど、アサカのカの字が『KA』じゃなくて『CA』なんです」
「へぇ〜、確かに変わったタイトルね」
その時、背後からただならぬ空気を感じた。
「ねぇ何で!?何でKAがCAなの!?
絶対何か理由があるはずだよ!!園子姉ちゃん思い当たらない?」
「さ、さぁ…?」
何かに取り憑かれたように、突然園子さんに詰め寄るコナンくん。
その様子に私と蘭さんは困惑を隠せなかった。
「あのもしよろしければ、先ほど話に出たリハーサル私も見学してよろしいでしょうか?波土禄道の大ファンなので」
「え!昴さんも!もちろん喜んで!!」
しかも沖矢さんまで。
ついさっきまで興味無さそうだったのに、タイトルの話が出た瞬間のこの2人の食い付きようは一体何なのか。
「因みに、ネットにそのタイトルが発表されたのはいつ頃ですか?」
「あー、つい先週だけど」
「5年ぶりの新曲だから、ネットニュースの上位になってたんです!」
「そうそう!」
「なるほど…」
園子さんと蘭さんの言葉を聞いて、何かを考え出した沖矢さんとコナンくん。
そして、2人とも私の方を向いて揃って口を開いた。
「さんは来ないでください」
「え?」
「さん、さっきそんなに興味無さそうだったよね?
だったら別にいいでしょ?」
何を言い出すかと思えば、何とも酷い言いようだ。
2人の食い付き方や私を遠ざけようとする様から察するに、恐らくこのリハーサルには何かがあるのだろう。例えば組織絡みとか。
全く、また私抜きで事を進めるつもりだな。