第34章 悪夢のつづき
「何故、数日経った今日になって行ったんだ?しかも夜中に」
「他の人からしたらたかがネックレスでしょ?そんな物のために捜査中の人達の邪魔をするわけにいかないじゃない。だから、警察入場許可の期限間近の夜に行ったってわけ」
「で、その大事なネックレスは見つかったのか?」
「残念だけど見つからなかった。すごく惜しいけど、諦めるしか無さそうだわ」
こんな簡単な嘘で騙せるような奴では無いのなんて分かってる。
きっと、この後から私の隠し事に対する尋問が始められるんだろうな。
でも私は絶対に口なんか割ってやんない。イリスから得た組織の幹部の情報も、さっき青柳に託した証拠品も、全て隠し通してやる。
私の覚悟とは裏腹に、目の前の彼は大きく息を吐いて俯いた。
「……そのネックレスが大事なのは、赤井からもらったからなのか?」
「…………は?」
徐に口を開いたかと思えばあまりに予想外の質問が飛び出てきたため、思わず素っ頓狂な声が出た。
「え、ごめん、なんて?」
「赤井からもらったから大事なのかと聞いているんだ」
「いや、何で急に赤井さんが出てくるのよ」
「随分と仲が良さそうだったもんな。2人きりで楽しそうに話して、怪我の手当てなんかして」
「だから、何で赤井さんが出てくんのってば!話聞けよ!
てかそれ何の話だよ」
「僕はこの目でしっかり見たぞ。2人でコソコソ密談している所を」
「密談て……。
……まさか、あの時あそこに居たのあんただったの?」
「あぁそうだ」
赤井さんの手当てをしている時に感じた視線はこいつだったのか。通りで姿が見えなかったわけだ。
「どうせ、事件があった日もあいつに会うために東都水族館にいたんだろ?最もらしい嘘なんかついて、僕を騙そうだなんて100年早い」
「いや違いますけど」
どちらかって言うとそっちは本当でネックレスが嘘なんですけど。
なんか、段々話の方向がズレていってる気がする。まぁ、こちらとしては好都合っちゃ好都合なんだけどさ。
「何がどう転んだらそういう考えになるのか分からないけどさ、とにかく赤井さんは関係ないから」
「嘘つくな」
「嘘じゃないし。
話が終わったなら帰らせていただきます」
そう言って踵を返して歩き出す私の腕をガッと掴まれた。
それなりの力だったため、思わず顔が歪む。